新築住宅を建てる際に「おしゃれな住宅デザインにしたい」と考える人もいるでしょう。屋根は建物全体の印象を左右する重要な部分でもあります。
しかし、屋根の形状について考えるときにはデザインの善し悪しだけではなく、その機能性に着目するのも大切です。今回は、屋根の形状ごとの特徴や地域の特性を踏まえた選び方について解説します。
屋根の形の種類はいくつある?
屋根の種類は全部で18種類あります。
一般的な住宅でみられる屋根の種類は、以下の7種類です。
・切妻屋根(きりづまやね)
・寄棟屋根(よせむねやね)
・入母屋屋根(いりおもややね)
・方形屋根(ほうぎょうやね)
・片流れ屋根(かたながれやね)
・招き屋根(まねきやねやね)または、差し掛け屋根(さしかけやね)
・陸屋根(りくやねやね)
そのほかにも少し変わった形の珍しい屋根が11種類あります。
・はかま腰屋根(はかまごしやね)
・半切妻屋根(はんきりづまやね)または、腰屋根(はかまごしやね)
・越屋根(こしやね)
・鋸屋根(のこぎりやね)
・錣屋根(しころやね)
・かまぼこ屋根
・バタフライ屋根
・M型屋根
・マンサード屋根
・ギャンブレル屋根
・複合タイプの屋根
一般住宅で多い屋根の形状!それぞれの特徴を理解しよう
ここでは先に紹介した屋根のうち、一般住宅で多い7種類の屋根の特徴とメリット・デメリットを紹介します。
切妻屋根(きりづまやね)
切妻屋根は屋根の棟(むね)、つまり屋根の登頂にある山形の部位から、本を逆さにしたように2面が伸びた屋根です。切り妻屋は最もスタンダードな屋根で、和風・洋風どちらの住宅でもよくみられます。
切妻屋根のメリットは、屋根自体の構造がシンプルなため雨漏りのリスクが低く、費用が安い点です。デメリットは、屋根で覆われない妻側(屋根を横からみて三角になっている側)が風雨や日光にさらされるために劣化しやすい点です。
寄棟屋根(よせむねやね)
寄棟屋根は屋根の棟から4面の屋根を設置したタイプです。4方向が屋根に覆われているため、落ち着いた印象になりやすい特徴があります。
寄棟屋根は全方向に屋根があり、日光や風雨から家の外壁を守りやすいのがメリットです。また、雨や雪がすみやかに地上に落ちることから、雨漏りリスクも低くなります。
しかし、構造が複雑なので施工費は高めです。また1面ごとの面積が狭いため、太陽光パネルを設置しにくいデメリットもあります。
入母屋屋根(いりおもややね)
入母屋屋根は寄棟屋根と切妻屋根を組み合わせ、一続きにしたようなタイプです。切妻屋根の妻側にあたる中、腹から屋根が伸びる形の入母屋屋根は、格調の高さが求められる神社仏閣でもよく採用されています。
入母屋屋根のメリットは、切妻屋根のデメリットである妻側の住宅保護の弱さがない点です。中腹から上の三角形の部分に窓を設けられるため、換気性能も落ちません。
一方、構造が複雑で職人技術も必要ですので、工事費用やメンテナンス費用が高額です。また、一般的に高級な日本瓦を用いるため、材料費もかかります。
方形屋根(ほうぎょうやね)
方形屋根はピラミッド状に4面が組み合わされるタイプです。寄棟屋根と違って棟がなく、頂点から4面が組み合わされた構造になります。
方形屋根のメリットは、正方形に近い家で発揮されます。四方を雨や雪から家を守り、かつすみやかに地上に排出されるため、住宅保護の効果が高いからです。また、雪下ろしをしやすいことから寒冷地でも好まれています。
一方、構造が複雑で施工期間や費用がかかることと、1面あたりの面積が少なく、太陽光パネルを設置しにくいことがデメリットです。
片流れ屋根(かたながれやね)
片流れ屋根は斜め1面の屋根で構成される種類です。高さがある側の天井を吹き抜けにして解放感を出したり、ロフトにして活用したりできることから、平屋建てで多くみられます。
片流れ屋根は構造的に最も単純であるため、コストが安いのがメリットです。また、1面が広いので、方角の条件が合えば太陽光パネルをたくさん設置できます。
一方、屋根が下りる側が1方向になるため、その他の面の風雨、日光を防ぎにくくなります。また、雨樋に雨水が集中するため、定期的なメンテナンスも必要です。
招き屋根(まねきやねやね)
招き屋根は差し掛け屋根(さしかけやね)とも呼ばれ、切妻屋根の一方を短くして、もう一方を長く取った形状です。棟で接合する構造ではなく、「人」という字のように、段違いに2面が支え合っているのが特徴とされています。
招き屋根のメリットは、段違いに支えることで強風に耐えられる点です。そのため台風が通過する地域などに向いています。また、段違いの部分に窓を設けて自然光を取り入れやすいことと、高い側に天井裏スペースを設けて活用できるのも魅力です。
一方デメリットは、2面が支え合う「雨仕舞い」の部分に直接雨があたり、雨漏りを発生させやすい点です。
陸屋根(りくやねやね)
陸屋根はビルの屋上のように平らな屋根が付いたタイプです。近年モダンなキューブ型の住宅が増えていますが、これらの住宅には陸屋根が採用されています。
陸屋根のメリットは屋根の部分が平らで落雪の恐れがないため、豪雪地に向くことです。また、屋根に雪を解かす電気ヒーターを設けたり耐荷重を増したりすれば、雪下ろしの回数を大幅に減らせます。豪雪地以外でも、屋上として洗濯物を干したり、ガーデニングやバーベキューを楽しんだりできるのも陸屋根ならではの魅力です。
しかし、水はけがよくないため、しっかり防水対策をしないと雨漏りのリスクがあります。また、屋根と居住スペースの天井との距離が近いため、断熱性が低いのもデメリットです。
屋根の形状の選び方
「デザインが気に入ったから」という理由だけで屋根の形状を選んでしまうと、快適な住環境を実現できず住宅の劣化を進めてしまうことにもなりかねません。ここでは目的や住んでいる地域などに応じた屋根の選び方のポイントを解説します。
コストを抑えたい場合
コストを抑えたい場合は、片流れ屋根がおすすめです。1面のみの片流れ屋根は構造がシンプルで雨樋の部材も少ないため、最もリーズナブルです。また、2面で構成されるシンプルな構造の切妻屋根もコストを抑えられます。
それに対して寄棟屋根や方形屋根のように4面で構成される屋根は、構造が複雑でコストが高めです。
積雪が多い地域の場合
豪雪地帯に住む場合は、急勾配の屋根を選ぶことが大切です。緩勾配の屋根を選んでしまった場合、積雪による重量で住宅に悪影響が出ます。積雪が多い場合は、雪が勝手に落ちる形状となっている切妻屋根、片流れ屋根がおすすめです。さらに落雪場所が1~2カ所に特定できるため、安全面も確保しやすいでしょう。
また、陸屋根のように無落雪型の屋根も向いています。住宅の強度が十分であれば雪かきの回数を減らせます。また、屋根に上って雪下ろしをしやすいのもメリットです。
太陽光パネルを搭載したい場合
太陽光パネルを設置したい場合は、広いスペースに多くのパネルを設置できる片流れ屋根が最適です。特に南側を片流れ屋根にできる場合は、発電量を増やせるでしょう。また、2面の切妻屋根も1面あたりのスペースが広いため、太陽光パネルの設置に向いています。
フラットな屋根の陸屋根は、方角に関係なく太陽光パネルを設置できます。太陽光パネルの遮熱効果で建物内が涼しくなったり、屋上にパワーコンディショナや配電盤を設置して庭を広く使えたりする点がメリットです。
デザインを重視したい場合
どのような家のデザインを望むかによって、最適な屋根の種類は変わります。
例えば、スタイリッシュに見せたいなら陸屋根や片流れ屋根が候補になるでしょう。陸屋根はモダンなキューブ型の家との相性が良好です。また、片流れ屋根はすっきりとした印象を出したい人に人気があります。
重厚感を出したいなら、寄棟屋根や方形屋根がよいでしょう。4方向の屋根下側の水平ラインが強調されるため、建物全体に重厚感や安定感が出るからです。また、対称性を出しやすいため、西洋建築に多いシンメトリーを強調した家にしたい人に向きます。
シンプルな切妻屋根は和風や洋風問わず柔軟に対応できます。勾配の角度や色・装飾でガラッと印象を変えられるでしょう。いずれにしても専門家と相談しながら、イメージを固めていくことをおすすめします。
雨漏りしにくい屋根を選びたい場合
台風が頻繁に通る地域に住む場合、屋根は緩勾配の形状を選びましょう。勾配とは屋根の傾斜のことです。急な勾配の屋根を選んでしまった場合、風の影響を受けやすくなるため屋根の劣化が早まります。ただし緩勾配の場合、雨や水が滞留しやすいため、防水効果の高い屋根素材を選ぶと安心です。
一般的に、雨漏りが一番しにくい屋根は切妻屋根とされています。理由は構造的にシンプルであるうえ、勾配を調整して水はけをよくしやすいからです。寄棟屋根や方形屋根も水はけはよいですが、構造が複雑である分、施工レベルによっては雨漏りのリスクが高まるでしょう。
一方、片流れ屋根は「けらば(妻側の端の部分)」が長いこと、強風時に横殴りの雨水を受けやすいことから雨漏りのリスクが高くなります。また、陸屋根は雨水がとどまるため、雨漏りリスクが最も高い種類です。
屋根の形で注意すべきこと
マイホームを建てる際には、好きなデザインの住宅にしたいと考える人は多いでしょう。しかし、住宅を建てる際には、地域によって定められたルールを守る必要があります。
屋根の施工に関する決まりとして「道路斜線制限」が挙げられます。道路斜線制限は、住宅のそばにある道路の採光や通風を確保するための決まりです。都市計画が進む区域に設定されていることが多いといわれています。次に挙げられるのが、「隣地斜線制限」です。隣地の採光や通風を守るために定められたルールは、人々の快適な儒環境を守るためのものです。
他にも市街地の景観を守るための「絶対高さ制限」や北側隣地の採光を守る「北側斜線制限」などの制限もあります。これらの制限は地域によって適応されるものとされないものがあります。新築を建設する際には、地域の制限について確認しておくことも重要です。
デザイン面と機能面から屋根の形を選ぼう!
屋根は素材だけではなく、その形状によっても機能が変わります。屋根の形状を選ぶ際には、デザイン性だけではなく機能面についても考えることが大切です。また、住む地域によって適した屋根の形状は異なります。屋根の形状に関する建築制限も地域によって異なるため、住む土地に最適な屋根の形状を選ぶようにしましょう。
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