建物には壁がありますが「内壁」といわれても、どの壁のことがすぐにわからない人もいるかもしれません。ひとことで「壁」といっても、実は大きく分けると2つの壁があります。
住宅などで外と内を仕切る壁は「外壁」と呼び、住戸内を部屋に仕切る壁は「内壁」です。その内壁についても、柱との関係でさらに2つの種類にわかれます。この記事では、内壁について、その構造や素材、また素材を選ぶ際のポイントについて詳しく解説していきます。
内壁って何?
住宅などの建物に最低限必要な要素は、大まかにいえば雨風や日射を遮るための「屋根」と、人が活動するための「床」です。ここに、屋根や上層階の床を支える要素として「柱」や「壁」が挿入されます。20世紀以降の建築は、構造要素として柱を重視して、壁は自由に配置する要素として扱っています。
特に、建物の内側に立てられる「内壁(ないへき)」は構造要素ではなく、部屋と部屋を空間的に区切る「間仕切壁(まじきりかべ)」として配置されることが多いのです。内壁は「部屋の内側に設ける壁」というのがもともとの意味です。
実務では、建物の内外を隔てる壁の内側部分を内壁と呼ぶこともあるのですが、ここでは「建物の内部に立てられた壁」について説明していきます。
内壁を造るための材料を「内壁材(ないへきざい)」と呼びます。雨風や日射の影響を直接受ける外壁(がいへき)では、水分や紫外線の影響で材料の劣化が進みやすいため、外壁材には「強い」材料を使う必要があるのです。
この強さを「耐候性(たいこうせい)」と呼んでいます。一方で、内壁で使う内壁材には制限がありません。水分や紫外線に弱い素材でも加工次第で問題なく使えるのです。
また、外壁材として使える素材は、内壁材として使うこともできます。つまり、内壁材はさまざまな素材で作ることができるため、バリエーション豊富で自由なデザインが可能なのです。
内壁の基本的な構造は?
木造にはさまざまな工法があります。一般的な2階建住宅などは、「在来木造工法(ざいらいもくぞうこうほう)」や「木造軸組工法(もくぞうじくぐみこうほう)」で建てられています。この工法では、鉄筋コンクリート造で基礎を造り、その上に木材の柱を立て、床を張っているのです。
屋根部分には「小屋組(こやぐみ)」と呼ばれる三角形の部分を乗せて、屋根が葺かれます。壁はどうなっているかといえば、立てられた柱に外壁材や内壁材を張り付けて作ります。このとき、内壁の作り方に「真壁(しんかべ)」と「大壁(おおかべ)」という2つのバリエーションがあるのです。
真壁は、柱と柱の内側に壁をはさみこむように立てます。そのため、構造材としての柱が見えている状態になります。柱と柱の間に壁が挿入されたような外観になるのです。これに対して、大壁は、柱を内壁材でカバーしてしまいます。外観としては、壁の仕上げ面だけが見えて、柱は見えなくなります。
同じ内壁でも、真壁にするか大壁にするかで、だいぶ印象が変わるのです。一般的には、真壁は和風テイストを強調したいときに用いられ、大壁は洋風なインテリアに合うといわれています。これら2種類の壁では、壁の素材自体は同じように使えるのですが、柱素材のクオリティーに注意が必要です。
真壁の場合、柱が見えてしまうので、構造材がそのまま化粧材(けしょうざい)になります。節や割れなどがなく、見た目がよい木材を使う必要が出てくるのです。
大壁であれば柱は見えないので、構造的な強度のみ考慮すればよく、コスト抑えることが可能になります。機能的には、大壁の場合、壁の内側に吸音素材を封入したり、耐力壁化できたり、施工性もよいので設備や構造的には有利です。そのため、どちらかといえば大壁を採用するケースが増えてきています。
内壁に使われる素材は?
内壁を「仕上げ」という観点で見た場合、2つに分けられます。壁の素材をそのまま見せるか、素材を下地として、その表面に仕上げを施すかです。前者は「現し(あらわし)仕上げ」とも呼ばれます。素材の物性そのものが仕上げになるため、構造的な強度や耐久性とともに美観が重要な要素になるのです。
後者は、どのような仕上げをするかによって、さらにバリエーションがあります。簡単にいえば、「塗る」か「貼る」かです。塗るタイプの仕上げとしては、塗壁や塗装があります。貼るタイプの仕上げとしては、クロス貼りやタイル貼りがあります。
まず、現し仕上げにする場合、木材であれば木板を貼ることになります。真壁では、柱とのコーディネーションが重要になり、同じ素材を用いると統一感が生まれ、異なるものを貼るとコントラストが強調されます。大壁では、柱の存在が消えるため、比較的大きな面積を壁だけで覆うことになり、場合によっては単調すぎたり、圧迫感を抱いたりするのです。
そのため、腰壁(こしかべ)と呼ばれる、人の腰高程度まで異なる素材で作る壁を付けたりして、落ち着きのある空間をつくることがあります。現し仕上げに使う素材は、木材なら節や割れのない「無垢材(むくざい)」が重用されます。
予算に限度がある場合、合板に天然木の薄い板を貼り付けた「天然木化粧合板(てんねんぼくけしょうごうばん)」などが使われるのです。
住宅で塗るタイプの仕上げといえば「塗壁(ぬりかべ)」です。塗壁とは、壁の表面に塗り壁用素材を塗布して仕上げた壁のことです。伝統的な和風住宅用素材としては、漆喰(しっくい)や珪藻土(けいそうど)などの自然素材が好んで使われる傾向にあります。
なお、漆喰や珪藻土を使ったからといって、それが室内環境を良好に保つかどうかは一概にいえません。漆喰は石灰石という岩石からできていて、それ自体に調湿機能はありません。
下地がある程度の厚みを持つ土壁であるときに、壁全体で調湿機能を持つのです。また、藻の殻が堆積してできた粉末状の珪藻には調湿機能がありますが、塗壁材としての珪藻土は漆喰や土を混ぜて作ります。
漆喰も珪藻土も同様ですが、市販品の中には化学繊維や接着剤や化学糊を混ぜて作られているものもあるのです。自然素材にこだわりたい場合には、素材がどのような材料でできているかをチェックするようにしましょう。
貼るタイプの仕上げでは、室内であればクロス貼り、浴室やトイレなどの水回りならタイル貼りが一般的です。クロスにはビニール系、紙系、布系などがあり、バリエーションが豊富です。
基本的に貼り替えが効くので、比較的容易に室内空間のイメージを変えることができます。焼成タイルには吸水率によって、磁器質、せっ器質、陶器質などの区分があります。水回りに貼るのは耐水性の高い磁器質タイルになります。
内壁材を選ぶときのポイント
内壁に使う素材を選ぶときには、主に3つのポイントを押さえましょう。1つ目は、デザイン性で選ぶ場合です。有名なデザイナーの家具や照明器具を使いたいときには、それらの存在が際立つような内壁材にします。
つまり、内壁は背景であり、舞台装置としてデザインするのです。この場合、内壁の仕上げには装飾的な素材は使わず、色目やトーンを抑えたものになるでしょう。
2つ目は、空間の使い方で選ぶ場合です。空間の用途を考えたときに、どのような雰囲気を目指すかによって、内壁材が決まってきます。
大まかに、木材や石材などの「硬い素材」と、紙や布系の「柔らかい素材」に分けるとします。一般的に、公的な空間には緊張感を持つ硬い素材、私的な空間にはリラックスした気分を誘う柔らかい素材が適しています。
3つ目は、部屋によって選び分ける場合です。たとえば、トイレなら耐水性のあるビニール系クロスや、磁器質タイルにするとよいでしょう。また、ベッドルームなら暖かみのある風合いを持つ布系クロスなどがおすすめです。
デザインや利便性を考慮した内壁にしよう
外壁材に比べて、内壁材にはさまざまな素材を使うことができます。建築で使えるものであれば、ほとんどの素材を使うことができるのです。ただし、実際に選ぶときには、見た目のデザインと利便性のバランスを十分に考慮しましょう。
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