注文住宅を検討する際、建物の高さを制限する条件がいくつかあることを考慮しておく必要があります。
高さ制限には道路斜線制限や日影規制などがありますが、今回は北側斜線制限について解説します。
北側斜線とはどういうものなのか、建物を建てるうえで北側斜線をどう捉えたらよいのかなどについて理解しておくことで、建物に対する理解もまた深まります。
自分にとって理想的な家を建てるためにも、建築の基本である北側斜線を前もって理解しておきましょう。
高さ制限の種類を知ろう
建築基準法で定められた建物の高さを制限する要件にはさまざまなものがあります。まず、今回紹介する「北側斜線制限」は3つある「斜線制限」のうちの1つで、残りの2つは「道路斜線制限」と「隣地斜線制限」となっています。
これらは、定められた一定の角度に沿って建物の高さを制限するために斜線制限と呼ばれます。道路斜線制限とは、建物が道路に面して建てられた場合に、道路の採光と通風を確保するために建物の高さを制限するものです。
道路斜線制限では、道路の建物と反対側の境界線を起点として伸びる斜線に沿って建物の高さが制限されます。
隣地斜線制限では、隣地境界線の地盤面から20m、あるいは31mの高さを起点として伸びる斜線によって建物の高さは制限されます。
しかし、隣地斜線制限は第1種、および第2種低層住居専用地域では適用されません。低層住居専用地域とは、住宅地として指定された用途地域の1区分です。
これらの低層住居専用地域では、別で絶対高さの制限が設けられているため、隣地斜線制限を適用する必要がないのです。
絶対高さの制限は低層住居専用地域のみに適用される規制で、建物の高さは10mと12mのうち都市計画で定められたどちらかを超えてはならないとするものです。
その他に、建物の高さを制限するものには日陰規制があります。日影規制は、主に住宅地に適用される日陰となる時間を一定の時間内に抑えるようにする制限で、「5h-3h/4m」のように表記されます。
「5h-3h」の部分は敷地境界線から5~10mの範囲では5時間まで、10mを超える範囲では3時間まで日影になってもよいことを表しており、「4m」の部分は測定する高さが地盤面から4mであることを表しています。
これらの建物の高さ制限は、基本的に住民の日照権を考慮して設けられているのです。
北側斜線制限は何のため?
CASE35 眺望のある外断熱住宅
北側斜線制限は、新しく建てる建物の北側の隣地の日当たりや通、風などの良好な環境を保護するために設けられています。北側の隣地ということは、隣地側から見れば南側に新しく建物が建つということになります。
北側斜線制限によって建物の高さを制限しなければ、以前からあった建物の日当たりは著しく阻害されてしまう恐れがあるのです。日当たりを悪くしてしまうと、日照権をめぐっての裁判沙汰にも発展しかねません。
そのため北側斜線制限はこのようなトラブルから市民を守るために北側斜線制限が設けられているというわけです。
北側斜線制限では、建物の高さと屋根の斜線の勾配に制限があり、隣地境界線と建物の位置関係にも制限がおよびます。
北側斜線制限の具体的な内容は?
北側斜線制限はどこでも適用されるというわけではありません。適用されるのは第1種、および第2種低層住居専用地域と第1種、および第2種中高層住居専用地域のみとなります。
隣地斜線制限と同じように、北側斜線制限は隣地境界線の地盤面から決まった高さを起点として斜線制限を展開します。
低層住居専用地域と中高層住居専用地域とではこの高さが異なり、低層住居専用地域では5m、中高層住居専用地域では10mと定められています。
建物の高さは、真北方向に測った隣地境界線までの水平距離の1.25倍に5mか10mを加えた高さ以下に制限されています。もう少し具体的に説明しましょう。
低層住居専用地域で新たな建物を建てる場合、隣地境界線から真北に5mの地点では、建物の高さは6.25mに5mを加えた11.25m以下に収めなければなりません。
また、隣地境界線から真北に10mの地点では、建物の高さは12.5mに5mを加えた17.5m以下に収めなければならないということになります。
同様に、中高層住居専用地域では加える高さが10mになりますが、日影を考慮して建物の高さにもともと制限がある場合は、北側斜線制限は適用外となります。
他の制限と重なったらどうなるの?
北側斜線制限が道路斜線制限などの他の制限と重なった場合は、より厳しい制限のほうが優先されることになります。
たとえば、道路斜線制限は前面道路の反対側の境界線を起点として、北側斜線制限の場合と同じ角度で斜線が伸びることになります。
道路の幅が広ければその分制限される範囲も狭まりますが、北側斜線制限と違って地盤面から斜線が展開されるので、より厳しく制限される可能性もあります。
道路斜線制限だけではなく、日影規制などの他の制限もあるので、これから建てる家にどんな高さ制限がかかってくるのかは十分に調査しておいたほうがよいでしょう。
一方で、これらの斜線制限を緩和するものとして天空率があります。
天空率とは、道路の反対側、あるいは隣の敷地から新たに建てられた建物のほうを見上げたときに、建物によってまだ遮られていない空の部分がどの程度あるのかということを、空と建物の比率から示した数値のことを言います。
北側斜線制限や道路斜線制限に引っかかるような建物であっても、天空率が許容範囲内に収まっていれば、これらの高さ制限は適用されないことになります。
北側が道路に面している場合は?
建物の北側が道路に面していた場合は、道路の反対側の境界線の地盤面から5mか10m高いところから計測をすることになります。
そのため、住宅地に隣接している場合よりも高く家を建てることができます。
この際にも、道路斜線制限との兼ね合いには気を付けましょう。
また、北側の隣地がこれから家を建てる敷地よりも1m以上高い場合は、その高低差から1m引き、さらに2で割った数値の分だけ敷地の地盤が高いところにあると仮定して、北側斜線を測定することができます。逆に、北側の隣地のほうが低かった場合は、高低差なしと仮定して斜線制限を適用することになります。
あくまでも真北が基準
北側斜線制限は、3階建てなどの高さのある建物を建てるときには気を付けなければならない制限です。
また、土地の向きが真北から少しでもずれていると、1方向のみではなく2方向からの北側斜線を検討しなくてはなりません。
ここでいう真北とは、磁石を使って調べる北とは異なっていて、地球の自転軸の北端を示す方位のことを指しますので、これらの細かい部分は素人からするとどうしてもわかりにくくなってしまいます。
そのため専門家に相談するのが無難となります。
注文住宅を検討する際は、自分で住宅に関する知識を調べることももちろん重要です。
しかし、そのうえでメーカーや工務店の専門家と相談を重ねていくことで、さらに理想に近い家を設計して建てることにつながるのです。
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