自宅に駐車場をつくるとき、十分な駐車スペースがなくてどうしたらよいか迷ってしまう家庭もあるでしょう。そういったケースの対処法のひとつに、ビルトインガレージが挙げられます。
ビルトインガレージは車庫と家の導線がスムーズになるなどのメリットがありますが、一方で間取りの制限や費用面でデメリットがあるため制約が多く、つくる前にしっかりとポイントを押さえておく必要があります。
そこで、この記事では、ビルトインガレージのメリットとデメリットを解説します。
Contents
ビルトインガレージとは?
ビルトインガレージとは、車の格納スペースを建物内に組み込み、シャッターなどを設置したガレージのことです。カーポートを設置する屋外の駐車場に比べて、防犯性が高いという特徴があります。また、別棟でガレージを建てるよりも敷地を有効活用できるため、土地の狭い日本で人気があるタイプです。
ビルトインガレージでは一般的に、1階部分にガレージを設け、2階部分を居住空間とします。間取りによっては家の中で車を鑑賞することもできるため、車好きのあいだでも人気があります。
ガレージ・インナーガレージ・ガレージハウスとの違い
「ガレージ」とは、住宅のある敷地内の駐車スペース全体を指します。「インナーガレージ」と「ビルトインガレージ」はいずれも建物内に設けられたガレージのことです。両者の使い分けは工務店などによりますが、ほぼ同じ意味合いで使われます。
インナーガレージやビルトインガレージがある住宅のことを「ガレージハウス」と呼びます。ガレージハウスは、敷地内に駐車場や独立したガレージのスペースがない場合などでよく採用されます。
ビルトインガレージに必要な設備
必要な設備を設けることで、ビルトインガレージはより便利に使えるようになります。
まず、忘れがちな設備が庫内照明です。ビルトインガレージはシャッターを閉めると内部が暗くなるため、庫内照明の設置が必要となります。センサー式ライトは最低限設置し、車の出し入れが問題なく行えるようにしておきましょう。また、庫内で作業する場合はしっかりと照らしてくれる照明が必要です。
次に、余裕がある場合はエアコンや除湿乾燥機の設置をおすすめします。ビルトインガレージは外につながっているため、夏場や冬場は過ごしづらい環境になります。エアコンを設置することで、ガレージ内での作業も快適になるはずです。また、車のコンディションを維持するためには、ガレージ内を一定の湿度に保つ必要があります。除湿乾燥機を設置すれば、車をより長く愛用できるでしょう。
最後に、趣味のスペースとしても使いたい場合は収納があると便利です。ガレージの壁に趣味の工具をかけるなど、スペースを有効活用するとよいでしょう。
ビルトインガレージに使われるシャッターの種類
ビルトインガレージに使われるシャッターの種類には、主に「巻き上げ式」「ベルト式」「オーバースライダー式」の3つがあります。
巻き上げ式のシャッターでは、チェーンでシャッターを巻き上げます。巻き上げ式シャッターのメリットは、シャッターがコンパクトに収まり、場所を取らないことです。ただし、巻き上げスピードの遅さや、巻き上げるときの音の大きさはデメリットだといえるでしょう。
ベルト式シャッターは、チェーンではなくベルトを使って巻き上げるタイプです。チェーンよりも静かに巻き上げてくれるというメリットがあります。しかし、チェーン式に比べてパワーで劣るため、重いシャッターには不向きです。
オーバースライダー式では、レールを敷いてシャッターを上にスライドさせます。パワーが強く、音も静かなので、チェーン式とベルト式の長所を合わせたようなタイプです。ただし、天井にレールを設置するためのスペースが必要になる点はデメリットです。
ビルトインガレージはどれくらいの費用がかかる?
ビルトインガレージを検討する際に気になるのが費用面です。ビルトインガレージは家の中に車庫を組み込む構造のため、屋根やゲートを付けるだけのほかの駐車場と比べて建築費用がグンと高くかかってしまいます。
ビルトインガレージは家と一体になるうえに地域によって坪単価が大きく異なるため、駐車場だけに費用がいくらかかるかを算出するのは難しいのですが、車1台分(約5坪)のビルトインガレージをつくるのに約250万円かかります。
さらに、ビルトインガレージは一階部分が空洞になることから、一般的な家よりも耐震などに弱く、排気ガスや防犯対策などをする必要もあります。そのため建物の耐震補強や、シャッターや照明、換気扇の設置などさまざまなオプションを付けることで料金が大きく変わります。
しかし、実はあるポイントを押さえれば節約につなげることも可能です。それは、ビルトインガレージの面積を延べ床面積の5分の1までにして固定資産税を安く抑えるという方法です。家族が使いやすい駐車場をつくることは大切ですが、新築時にコストダウンのコツを知っておくと、長年支払わなければならない料金を削減することができるのです。
ビルトインガレージにするメリットとは?
ビルトインガレージには四点のメリットがあります。
まず一点目は車を悪天候や犯罪から守ることができるという点です。ビルトインガレージは家の中に車をすっぽりと入れておくことができるので、雨風はもちろん雪の多い地域では除雪の手間を省くことができます。悪天候から車を守るという点ではカーポートも同様の役割を果たしますが、ビルトインガレージは壁とシャッターもあるので、愛車へのいたずらや盗難などの犯罪をより防ぐことが可能です。
二点目は、駐車場と家の中への導線がスムーズだという点です。これまで帰宅したとき、屋外の駐車場から家の中に入る際に雨に濡れてしまった経験や、大荷物の運搬に苦労した経験がある人もいるのではないでしょうか。ビルトインガレージを設置すると、移動中に雨に濡れることはありませんし、車を降りたらすぐ室内に入ることができるので大荷物の運搬も手間が少なくなります。
三点目は、車の整備や鑑賞、秘密基地のような使い方をするなど趣味としてのスペースにも使えるという点です。ガレージ内にシャッターやライト、工具を設置すれば、時間や天候を気にすることなく好きな時間に趣味に没頭することができます。
四点目は敷地面積を有効活用できるという点です。一般的に、駐車場をつくる際は建物の敷地とは別に駐車スペースを考えます。一方、ビルトインガレージだと駐車場を建物の中に組み込めるので、都市部のような狭い土地でも駐車場をあきらめる必要がありません。
ビルトインガレージのある間取りで注意したいこと
ビルトインガレージのある家では、住宅部分の間取りが制限されやすい点や車の騒音対策、将来の買い替えといった注意点があります。それぞれについて詳しく解説します。
居住スペースの確保する
ビルトインガレージがある家では、設けない住宅に比べて間取りが制限されやすい傾向があります。一般的な住宅では、1階にリビングやダイニング、お風呂などを配置します。一方、ビルトインガレージでは1階に車1、2台分(約6~8帖)のスペースが必要になり、1階の居住スペースが約1部屋分減ってしまいます。
1階のほとんどを駐車スペースとして割り切り、2階と3階に居住スペースのある3階建ての一軒家にする、など対策を考えましょう。
騒音対策をする
一般的なビルトインガレージは、駐車場と居住スペースをドアや壁などで区切っていますが、家の中に車庫があることには変わりありません。そのため、車の発進時や駐車時には、家の中にエンジン音が響きやすくなります。
特に早朝や夜遅くに車を使うことの多い家庭などでは、ガレージと寝室を離す工夫が必要です。たとえば、1階にお風呂、2階にリビングやキッチン、3階に寝室を設けることで、音の影響を抑えられるでしょう。
将来の車の買い替えや台数の変更の可能性を考える
ビルトインガレージは簡単にサイズを変えられないため、将来の車の買い替えや台数の変更を見据えて決めることも大切です。将来の家庭環境によっては、必要な車の種類や台数が変わる場合があります。子どもが成長して大きな車に換える、通勤用に1台追加する、などの可能性を考慮して設計しましょう。
ビルトインガレージの建築実例3選
どのようなビルトインガレージにするべきか迷うという人は、実例を参考にするとよいでしょう。ここからは、フリーダムアーキテクツが手がけたビルトインガレージの実例3選を紹介します。
CASE585 いしのいえ
内外装に「いし」を用いた上品な家にビルトインガレージを採用した事例です。壁を白で統一したガレージは大きく、大型の車が楽に収まるほどスペースに余裕があります。外壁のシックな黒とビルトインガレージの白が引き立て合い、上品な佇まいを演出しています。
CASE637 『Assemble』
こちらの事例では、塗り壁とコンクリート打ちっぱなしを組み合わせた個性的な家の正面に、大胆にビルトインガレージを取り入れています。ガレージ内部は車1台とバイク1台を収納できる広さがあり、側面に置かれたレザーソファがアメリカンな雰囲気を漂わせています。コンクリート打ちっぱなしの無骨な印象と暖色系の照明の温かさが相まって、どこか懐かしさを感じさせるデザインです。
CASE639 Wall Side
4枚の黒い壁を中心に構成された特徴的な外観の家に、うまくビルトインガレージを取り入れた事例です。ガレージ内部は車1台がぴったりと収まる広さで、無駄のないスタイリッシュな仕様となっています。夜になれば照明が中庭やガレージを照らし、高級感のあるシックな雰囲気へと様変わりします。
ビルトインガレージのどこに魅力を感じる?
最後にビルトインガレージに対する印象や憧れについて調査したアンケート結果を紹介します。
【質問】
ビルトインガレージへの憧れはありますか?
【回答結果】
いいえ : 53
はい : 47
調査地域:全国
調査対象:年齢不問・男女
調査期間:2017年09月04日~2017年09月11日
有効回答数:100サンプル
車愛好家にとっては憧れ!でも耐震性や冷えが気になるという意見も…
今回のアンケートでは、ビルトインガレージへの憧れはほとんど半々に分かれる結果になりました。
まずは、「いいえ」と回答した人の意見を見てみましょう。
・イメージですが耐震性が低くなる気がする。また一階を居住に使えないのは不便。(50代/女性/正社員)
・寒冷地なので、下に広い空間があると底冷えしそうなので、憧れはありません。(30代/男性/正社員)
・駐車する時に建物にぶつけそうで怖いから。(20代/女性/パート・アルバイト)
「いいえ」の回答理由では、耐震性が心配だという声が多く見られました。
また、少数派ではありますが駐車が苦手な人や居住スペースが削れるのが気になる人もおり、そういった人にはビルトインガレージは少し躊躇してしまうようです。
一方、「はい」と答えた人のコメントは次の通りです。
・天気の悪い日も気にせずに車の乗り降りができるし、車も汚れから守るので傷みにくいと思うので、憧れます。(40代/女性/無職)
・自分の愛車との距離感が近く、ビルトインガレージは快適な整備環境。また車を単なる交通手段の道具としてではなく、自宅のインテリアとして配置することができるのが粋だと思う。(20代/男性/派遣社員)
・あります。車が大好きなので目の前に車があると落ち着けそうです。(20代/女性/パート・アルバイト)
「はい」と答えた人の声を見てみると、車が好きだという人はもちろん、荷物の積み下ろしの手軽さや防犯性を評価している声が多数挙がりました。
ビルトインガレージだと愛車がインテリアになるうえに、家の外観がスタイリッシュでおしゃれに見えると考えた人が多いようです。
今回のアンケートでは、「いいえ」と答えた人が「はい」と答えた人よりも若干上回りました。
詳しく意見を見てみると、いいえ派でも「そもそも車を持っていない」、「ビルトインガレージを知らなかった」という声が多く挙がっているので、純粋に評価がほぼ真っ二つに割れたとは言えませんが、いずれにせよビルトインガレージをつくる際はメリットとデメリットの両方を踏まえる必要があるようです。
ライフスタイルに合わせてビルトインガレージを取り入れよう
ビルトインガレージは、見た目がスタイリッシュで趣味の場としても活用できるため、車好きの人の憧れになっています。ただし、「格好いいから」といった理由だけで家の間取りや費用を考えずに取り入れてしまうと、後々デメリットの方が大きくなってしまい、快適な生活とはかけ離れてしまう恐れがあります。居住スペースの間取りや騒音問題などの注意点もあるので、将来の生活スタイルを見据えて作ることが大切です。
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ガレージハウス(ビルドインガレージ)に関するよくある質問
ガレージを建築するにはいくら費用がかかる?
ガレージの建築費用は、その大きさ、材料、設計、地域などにより大きく変動します。一般的に、シンプルな一台用のガレージは数百万円から、より大きく複雑な設計のものは数千万円以上かかることもあります。具体的な費用を知るためには、建築会社や設計事務所に相談し、見積もりを取ることをおすすめします。また、建築費用だけでなく、土地の準備費用や設計費、許可申請費用なども考慮に入れる必要があります。
新築車庫の費用はいくらですか?
新築車庫の費用は、その大きさ、材質、設計などにより大きく変動します。一般的には、シンプルな一台用の車庫であれば、約50万円から100万円程度が目安となります。しかし、二台用や高級な材質を使用したり、特別な設計を要求する場合は、それ以上の費用がかかることもあります。また、地盤改良や排水設備などの付帯工事が必要な場合も費用が上がります。具体的な費用は、建築会社や工務店に見積もりを依頼することで確認できます。
車一台分のガレージは何坪必要ですか?
一般的に、車一台分のガレージには約2.5坪(約8.25平方メートル)のスペースが必要とされています。ただし、車の大きさやガレージ内に収納する物の量、車を出し入れする際の動線などにより必要な面積は変わるため、具体的な設計は専門家と相談することをおすすめします。
新築一戸建てのガレージの種類は?
新築一戸建てのガレージには以下のような種類があります。
1. 一体型ガレージ:家と一体化したガレージで、家のデザインに合わせて設計されます。雨や雪から車を守ることができ、また、車から家への移動も楽になります。
2. 別体型ガレージ:家とは別に設置されるガレージで、敷地の広さや形状によって位置を自由に選べます。また、後から追加することも可能です。
3. 地下ガレージ:地下に設けられるガレージで、敷地を有効活用できます。セキュリティ面でも優れていますが、建設費用が高くなることが多いです。
4. カーポート:屋根だけの簡易的なガレージで、コストを抑えることができます。ただし、車体を完全に守ることはできません。
これらのガレージの種類は、予算や敷地の状況、車の保管状態などによって選ぶことができます。
ビルトインガレージの建築費用はいくらですか?
ビルトインガレージの建築費用は、その規模や設計、使用する材料などにより大きく変動します。一般的には、約1000万円から3000万円程度が目安とされています。ただし、これはあくまで一般的な価格帯であり、具体的な費用は設計内容や選択する建材、施工業者の料金体系などによります。より正確な見積もりを得るためには、具体的なプランを持って複数の建築会社に相見積もりを依頼することをおすすめします。
ビルトインガレージは建築面積に含まれますか?
はい、ビルトインガレージは建築面積に含まれます。建築面積とは、建物の1階部分の床面積のことを指し、ビルトインガレージもその一部として計算されます。ただし、地域や建築基準法によっては、ガレージ部分が建築面積から除外されることもありますので、具体的な計画を進める際には、設計士や建築士に確認することをおすすめします。
ビルトインガレージの固定資産税はいくらですか?
ビルトインガレージの固定資産税は、そのガレージの床面積や建築費用、立地条件などにより異なります。具体的な金額を知るためには、地方自治体の固定資産税課に問い合わせるか、専門家に相談することをおすすめします。また、新築時には登録免許税や都市計画税なども発生するため、それらも合わせて考慮する必要があります。
ビルトインガレージは安全ですか?
ビルトインガレージは、家の一部として設計されたガレージで、車を直接家の中に駐車することができます。そのため、車の盗難や悪天候からの保護という観点からは安全性が高いと言えます。また、家から車への直接アクセスが可能なため、夜間や悪天候時の移動も安全です。 ただし、火災のリスクを考慮すると、車両からの火災が直接家屋に繋がる可能性があるため、適切な防火対策が必要です。また、エンジンの排気ガスが家の中に入らないようにするための換気設備も必要となります。 したがって、ビルトインガレージは適切な設計と管理が行われていれば、安全に使用することができます。
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