• 住宅ローン・お金
  • 年末調整で必要!住宅借入金等特別控除申告書の書き方や手続きの方法を解説

    6,923 view

    住宅ローンを契約して家を購入したあと、住宅ローン残高に応じて税制優遇を受けられます。1年目は確定申告が必要となりますが、2年目以降はより簡易的な「住宅借入金等特別控除申告書」を提出すれば手続きが可能です。

    一度経験しておけばそれほど難解な書類ではないため、2回目以降の作成もぐっと楽になるでしょう。

    今回は、住宅借入金等特別控除申告書の詳しい書き方や提出方法を紹介します。

     住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)の基礎知識

    まずは、これから住宅を購入する人に向けて、住宅借入金等特別控除の基礎知識をご紹介します。

    「どんなケースが対象なのか」「いくら控除されるのか」など、詳しく見てみましょう。

    住宅借入金等特別控除の要件

    「住宅借入金等特別控除」の制度は、住宅を購入していれば誰でも利用できるわけではありません。以下のように要件が定められており、すべてに該当する人のみ対象となります。

    【住宅借入金等特別控除の要件】

    • 購入や新築から6か月以内に住み始めている
    • 特別控除の対象となる年の末日まで住み続けている
    • 床面積が50平方メートル以上(特例居住用家屋または特例認定住宅等は40平方メートル以上50平方メートル未満)
    • 店舗併用住宅などは床面積の50%以上が居住用である
    • 住宅ローンの返済期間が10年以上
    • 住宅を複数所有している場合はメインの居住用住宅である
    • 居住開始の年を含めて過去3年間・以後3年間規定の税制優遇(※後述)を受けていない
    • 同一生計の親族や家族・親戚など特別な間柄の人からの購入ではない
    • 贈与によって住宅を取得していない

    居住開始した年を含めて過去3年間と、居住年の翌年以後の3年間に、他の不動産で以下の税制優遇の特例を利用している場合は、住宅借入金等特別控除は利用できなくなります。

    • 居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例
    • 居住用財産の譲渡所得の特別控除
    • 特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例
    • 財産を交換した場合の長期譲渡所得の課税の特例
    • 既存市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え及び交換の場合の譲渡所得の課税の特例

    参考:No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁

    住宅借入金等特別控除で控除される金額

    住宅借入金等特別控除で控除される金額は、申告の対象年の年末残高をもとに計算します。

    令和4年から令和7年に居住を開始するケースでは、年末残高の0.7%の税額控除を受けられます。年末残高が2,000万円の場合の控除額は以下のとおりです。

    2,000万円×0.7%=14万円

    なお、住宅の区分と居住開始年によって、異なる年間控除限度額が定められています。令和4年から7年の間に居住を開始すると、上限は以下のとおりです。

    令和4年令和5年令和6年令和7年
    認定長期優良住宅認定低炭素住宅35万円31万5,000円
    特定エネルギー消費性能向上住宅31万5,000円24万5,000円
    エネルギー消費性能向上住宅28万円21万円
    一般の新築住宅21万円14万円

     住宅借入金等特別控除を受けるための手続き

    住宅借入金等特別控除を受けるには手続きが必要で、1年目と2年目以降では方法が異なります。具体的な手続き内容を見てみましょう。

    初年度の場合

    初年度、つまり初めて控除を受ける際は、確定申告による手続きが必要です。確定申告書に記入のうえ、必要書類を添付し、住所地を管轄する税務署に提出します。手続きの期限は、例年3月15日です。

    確定申告書は、インターネットの電子申告や郵送で受付されています。税務署を直接訪問して作成することも可能です。

    確定申告の時期には、税務署に専用の窓口ができることも多いです。不明点について相談しながら確定申告書を作成することもできます。

    初年度の申告では、借入金の詳細や売買の事実を証明する書類など、多くの添付書類が必要です。申告に遅れないよう、期間に余裕を持って集めておくと慌てずに済みます。

    2年目以降の場合

    2年目以降、会社員など勤務先がある人については、職場での年末調整による手続きができます。初年度とくらべて添付書類が少なく、必要事項も簡易的なため手間は小さくなります。

    年に一度しか提出しないため、書き方を忘れそうで不安な人は、2年目に作成した書類をコピーして取っておきましょう。見本として持っておくことで、来年以降迷わず記入できます。

    住宅借入金等特別控除申告をするときの必要書類

    2年目以降の手続きにあたる、住宅借入金等特別控除申告をする際は、以下の2つの書類が必要となります。

    • 住宅借入金等特別控除申告書
    • 住宅ローンの年末残高等証明書

    各書類の詳細や入手方法などについて、詳しく紹介します。

    住宅借入金等特別控除申告書

    住宅借入金等特別控除申告書は、借入金の申告対象年の年末残高や内訳を明らかにし、控除額を申請するための書類です。正確には「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」といいます。自分で記入し、年末調整の際に職場に提出しなければなりません。

    この書類は、確定申告をした年の10月頃になると、税務署から送付されてきます。控除を受けられる残りの年分がまとめて届くので、無くさないよう大切に保管しておいてください。

    なお、紛失した場合でも手続きすれば再発行できます。詳細は後ほど紹介します。

    住宅ローンの年末残高等証明書

    住宅ローンの年末残高等証明書は、その年の年末時点でのローン残高を証明するためのものです。正式名称を「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」といいます。年末調整や確定申告で控除額を申告する際に必要なため、住宅ローンを契約している金融機関が送ってくれます。

    おおむね10月から11月にかけてハガキで郵送されてきます。うっかり捨ててしまわないよう注意しましょう。

    なお、紛失した場合も再発行を受けることができます。金融機関へ電話や窓口から依頼してください。発行に時間がかかることも考えられるため、紛失が判明したらなるべく早く相談することをおすすめします。

    【新築】住宅借入金等特別控除申告書の書き方

    画像引用:給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書の記載例|国税庁

    住宅を新築した際の、住宅借入金等特別控除申告書の書き方を具体的に紹介していきます。

    今回は令和4年に年末調整を受けるケースを例に挙げますが、年度によって書式や項目が異なることもありますので注意してください。

    最上欄(会社名・氏名・住所)

    まずは、申告の当事者と会社についての情報を記載します。各項目は以下のように埋めてください。

    【税務署長】

    勤務先の所在地を管轄する税務署を記載します。分からなければ空欄でも問題ありません。

    【給与の支払者の名称(氏名)】

    勤務先の名称を正式名称で記載します。「株式会社」「合同会社」などが前後どちらに付くかは会社によって異なるため注意してください。

    【法人番号】

    空欄で問題ありません。

    【給与の支払者の所在地(住所)】

    勤務先の住所を記載します。

    【あなたの氏名】

    申告する人の氏名をフリガナ付きで記入します。名前の上部に世帯主と続柄を書く欄がありますので、そちらも記入してください。

    例:納税花子・本人

    ① 新築、購入に及び増改築等に係る住宅借入金等の年末残高(内、連帯債務による借入金の額)

    借入金額等の年末残高は、申告対象となる年の12月31日時点での住宅ローン残高を指します。金融機関から送られてきた「住宅ローン残高証明書」を見ながら記入してください。

    申告書の①欄には「A住宅のみ」「B土地等のみ」「C住宅および土地等」の3つの区分があります。どこに記入するかは、住宅ローン残高証明書の「住宅借入金等の内訳」に書かれていますので、該当の箇所に記入しましょう。

    ② 住宅借入金等の年末残高(①のうち単独債務の額+①のうち連帯債務の額×「連帯債務割合」)

    連帯債務者を設定している場合、ここで負担割合を記載しましょう。住宅ローンの契約時に、夫婦で収入合算をしているケースなどが該当します。

    負担割合は、不動産に設定している所有権(持分)の割合で決まっています。申告書下部の「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」の「ト」欄にも記載されていますので、確認してみてください。

    【連帯債務者を設定していない】

    ①の内容をそのまま転記してください。

    【連帯債務者を設定している】

    負担割合と負担額を記載します。年末残高1,000万円で、負担割合が40%であれば、記載は次のとおりです。

    例:40% 4,000,000円

    ③ ②と証明事項の取得対価の額又は増改築等の費用の額のいずれか少ない方の金額

    申告書下部の控除証明書を確認してください。「ホ」と「ロ」の合計額と、申告書の②の金額を比べ、金額の少ない方を記入します。

    ④ ③×「居住用割合」

    申告書下部の証明書の「ハ」に居住割合が記載されています。店舗兼住宅などの場合、居住用としている割合のみが計算の対象となります。一般的な住居専用の住宅であれば、100%の記載になっているはずです。

    ここでは、③の数字に居住割合をかけた金額を記入してください。

    ⑤ 住宅借入金等の年末残高等(④の欄の合計額)

    ④の欄の合計額を記載します。

    ⑥ (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額

    ⑤の金額の1%を記載します。⑤が2,000万円の場合、記入する金額は20万円です。100円未満の端数が出るときは切り捨てて記入してください。

    年間所得の見積額

    「年間所得の見積額」には、所得額の目安を記入します。住宅借入金等特別控除は、年間所得の合計額が2,000万円以下の場合のみ利用できるため、この項目で確認を行います。あくまで収入ではなく「所得」なので、各種社会保険などが控除されたあとの金額を記入してください。

    記入する年間所得は、あくまで見積もりですので、厳密に計算する必要はありません。毎月の所得から年額を計算しても良いですし、大きく変化がなければ昨年の源泉徴収票の金額を記載しても問題ありません。

    なお、所得の上限が2,000万円なのは、2022年以降に居住を開始した人です。2021年までに居住を開始した人の場合、上限は3,000万円となっています。年によって細かい違いがありますので、混同しないよう注意してください。

    備考欄

    連帯債務者がいる場合は、連帯債務者から残高を負担している旨を記載してもらい、署名・押印を受ける必要があります。

    負担金額が分かればよいので、記載は簡易的な形で問題ありません。最後に記名と押印を忘れずにもらってください。

    例:

    私は、連帯債務者として住宅借入金等の残高のうち○○万円を負担しています。

    納税花子 印

    住宅借入金等特別控除申告書の提出方法と還付の時期

    作成した住宅借入金等特別控除申告書は、年末調整で勤務先に提出します。金融機関から送付されてくる住宅ローン残高証明書を必ず添付してください。

    提出時期は勤務先によって異なりますが、おおむね11月ごろに年末調整を行うことが一般的です。スムーズに提出できるよう、早めに準備をしておくことをおすすめします。

    還付金がある場合の支払い時期や方法も、勤務先によって異なります。通常は、12月または1月の給与と同時に振り込まれることが多いですが、決まったルールはありません。なかには、手渡しや給与とは別の振り込みで支払いを行うところもあります。

    なお、年末調整はあくまで「税額の精算」なので、還付を受けるだけでなく追加で徴収されることもあります。還付の時期が過ぎているのに還付金が届いていないのであれば、一度給与明細を確認してみてください。

    住宅借入金等特別控除申告書を紛失した場合は再発行が可能

    住宅借入金等特別控除申告書は、全期間分がまとめて郵送されてくるうえ、基本的には1年に1度しか使いません。なかには紛失してしまったという人もいるでしょう。

    住宅借入金等特別控除申告書を紛失した場合は、申請すれば再発行が可能です。書式は窓口で受け取れるほか、インターネットで公開されています。

    「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除関係書類の交付申請書」に記入し、住所地を管轄する税務署に提出してください。請求事由を記載する欄がありますので「2.紛失のため」を選びましょう。

    申請書の提出は窓口でもできるほか、郵送でも受け付けてもらえます。

    参考:[手続名]年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除関係書類の交付申請手続|国税庁

    ※申請書のダウンロードもこちらから。

     年末調整を忘れた場合は確定申告を行う

    年末調整で借入金等特別控除の申告を忘れた場合も、確定申告を行えば税額控除を受けることができます。

    職場に再度年末調整をお願いすることもできますが、年末の時期は事務関連の部門は何かと多忙です。1月末までは年末調整の修正ができますが、負担が大きいと断られる可能性はあります。

    そのため、確実なのは自分で確定申告を行うことです。所得税は、対象年の翌年を含む5年間まで還付申告ができます。年末調整に間に合わなかった場合はこちらで手続きをすることをおすすめします。

    住宅借入金等特別控除申告書を正しく記入して住宅ローン控除を受けよう

    住宅ローン控除を受けるには、毎年のように手続きが必要なため、面倒に感じる人も多いかもしれません。しかし、年間数十万円単位の節税が可能なため、忘れずに申告しておきましょう。

    初年度は確定申告が必要となりますが、幸い2年目からは簡易的な書類の記入と職場への提出のみで手続きができます。心配な場合は、2年目に作成した申告書をコピーしておくと、次回からの作成がぐっと楽になりますよ。

    住宅ローン控除の手続きが心配であれば、住宅購入時に相談に乗ってくれる不動産会社を選ぶのも選択肢の一つです。

    フリーダムアーキテクツは、購入する家のことはもちろん、各種補助金や税額控除など煩雑な手続きについてもサポートしています。「お得に住宅ローンを組みたい」「税額控除分も考慮して購入費用をシミュレーションしたい」こうしたご希望をお持ちの方は、ぜひご相談ください。

    カテゴリー:

    新着記事

    おすすめ記事