注文住宅では、階段も自分や家族の好きなものを選ぶことができます。一方、注文住宅の階段は非常にバリエーションが豊富なために、後悔する選択をしてしまったという人は少なくありません。
事実、階段選びはデザイン重視で決めてしまうと、失敗しやすい部分の一つです。そのため、家族構成や実用性、住宅の条件などを考慮しながら、最適なタイプを選ぶことが重要になってきます。
今回は、過去に注文住宅を建てた人が、階段選びで後悔したポイントとその対処法を紹介します。
Contents
注文住宅の階段を考えるときのポイント1.「階段の配置」
階段の機能性や家族のライフスタイルを左右する点の一つが、「どこに配置するか」という問題です。ここでは、代表的な階段の配置と、それぞれの生活面での機能や特徴を紹介します。
廊下・玄関付近の階段
階段の設置場所として一般的なエリアといえば、廊下や玄関付近など、リビングの外です。帰宅直後にリビングの家族と顔を合わせないため、家族間でのプライバシーが確保しやすいという特長があります。
また、階段はリビングと扉で空間が仕切られていることが一般的です。そのため、階段をつたって2階にニオイや音が伝わりにくく、さらに冷暖房効率が良いことも利点です。夜勤の家族がいるなど、それぞれ生活サイクルが違うケースなどでは、快適に過ごしやすいでしょう。
一方、家族が帰宅後にリビングを通らず自室に行けるため、顔を合わせる機会が少なくなることもあります。家族の変化に気づきにくくなるなど、関係が希薄になることが懸念点です。
リビング内の階段
リビングの一角に階段が配置されている、いわゆる「リビング階段」「リビングイン階段」「リビング内階段」も階段の配置の選択肢です。
家族それぞれの個室を2階にする場合、部屋に移動する前に必ずリビングを通るため、家族が顔を合わせやすく、自然とコミュニケーションが発生する間取りになります。
一方、階段と2階の間をドアなどで仕切らない場合、音やニオイが2階に伝わりやすい点に注意が必要です。家の間取り次第では、例えば焼肉や焼き魚の臭いが階段を通じて2階全体に広がってしまうこともあるでしょう。また、冷暖房の効率も悪くなる傾向があります。
注文住宅の階段を考えるときのポイント2.「階段の種類」
注文住宅の階段は、形状や設置スペースによっていくつか種類があります。ここでは、特に検討されることの多い人気の4種を紹介します。
直階段
直階段は、その名の通り1階部分から2階部分までまっすぐ直線で斜めにつながっている階段のことです。
比較的設置スペースが少なく済み、費用も安いという特長があります。一般的な建坪の住宅はもちろん、広さにあまり余裕がない狭小住宅などでも検討できるタイプです。総じて、実用性の高い形の階段といえます。
ただし、高さはそのままに底辺の短い直角三角形をイメージするとしてもらうと分かりやすいように、設置スペースが小さいということは、階段の勾配が急になりやすいことを意味します。
特に小さな子どもや高齢の家族がいる家庭は、転落防止のために素材やデザイン選びで工夫するようにしましょう。
かね折れ階段
かね折れ階段は、階段の途中で90度折れ曲がるタイプの階段です。折れ曲がる部分に踊り場が設置されます。
途中に踊り場があるため、万一足を踏み外しても階下まで一気に転落しにくく、ケガのリスクを軽減できます。また、直階段と比べ急勾配になりにくいことも特長です。
デメリットは直階段よりやや建設費用が高く、広めの設置スペースが必要になることです。階段で居住スペースを圧迫しすぎて住み心地が悪くならないよう、間取りのシミュレーションを入念に行うようにしましょう。
折り返し階段
真上から見たときにU字に途中で折れ曲がっているのが折り返し階段です。
直階段と比べると勾配がゆるやかでステップ数が多くなりやすいため、ステップの間の段差が低く歩きやすいメリットがあります。また、かね折れ階段と比べて踊り場が広めになることが多く、上る途中でひと休みできます。こうした特長から、シニア層やペットと暮らす家にもおすすめの構造です。
ただし、階段自体がやや大型になりやすく、設置にはある程度の広さが必要な点には注意してください。階段下のスペースをうまく活用するなど、狭さを感じさせないよう間取りを工夫しましょう。
らせん階段
らせん階段は、ステップが中心のポールにまきつくように放射状に設置されている階段です。見た目がおしゃれで、デザイン性の高さから人気があります。
サイズによっては他の種類の階段より設置スペースが小さく済みます。そのため、直階段と並び、狭小住宅で検討されやすいタイプです。
しかし、らせん階段は一般的に他の種類の階段より建築費用が高くなりやすい傾向があります。また、内側にいくほどステップの幅が狭く、外側にいくほど前後のステップとのすき間が広く開くという特徴により、転落には注意してください。
階段の種類については、「【注文住宅】階段の種類別メリットとデメリット!費用感とおしゃれな建築実例を紹介」の記事でも詳しく紹介しています。
注文住宅の階段を考えるときのポイント3.「階段のデザイン」
階段のデザインは、見た目の印象だけでなく、階段の使い勝手も左右する大切な要素です。階段のステップと手すりの2つのポイントに分けて、どのような選択肢があるか見てみましょう。
ステップのデザイン
階段のステップのデザインは選択肢が豊富で、自分や家族の好みや予算、家族構成などに合わせて適したものを選ぶことができます。
箱型階段
箱を積み重ねた形が特徴的な箱型階段は、階段下のスペースを、収納などに使えます。階段デザインの中では箱型階段が比較的安価で、構造的な安定性も高いです。
スケルトン階段
蹴込板(ステップ下に垂直に設置される板)のないのがスケルトン階段です。デザイン性が高く開放感のある作りが特長です。
ひな壇階段
ひな壇階段は、横から見たときにステップの側面が見えるようになっているのが特徴です。リビングに設置すれば階段を上る子どもの見守りもできます。
片持ち階段
宙に浮いているような外観が特徴的なのが片持ち階段です。デザイン性が高く空間作りにこだわる人から支持されています。
なお、階段のステップはパーツが少なくデザイン性が高いものほど補強が必要になる傾向にあります。片持ち階段は金属製のプレートや鉄骨をステップの中に入れて現場でつなぐといった工夫が必要になるため、その分費用が高くなりやすいでしょう。
手すりのデザイン
転落防止用の手すりのデザインは、大きく分けて「オープン用手すり」「壁付け用手すり」の2種類があります。
壁付け用手すり
壁と階段がつながっている場合、壁付け用手すりを採用できます。手すり棒を支えるブラケットを、部屋のイメージに合わせて選ぶと、階段全体をおしゃれな印象にできます。
オープン手すり
階段の片側がオープンになっている場合、転落防止に役立つのがオープン手すりです。開放感を損ねることなく事故のリスクを抑えられます。
なお、手すりの握りやすさは安全面や使いやすさに影響します。階段でバランスを崩した際に、とっさに掴んで体を支える役割があるため、家族全員が使いやすいものを検討しましょう。設計事務所やモデルハウスに手すりのサンプルがある場合は、実際に握って確認してみることをおすすめします。
実は多い!注文住宅の階段で後悔することとその対策方法
注文住宅の階段は、実は完成してから後悔することも多いポイントの一つです。後悔しやすいポイントと、それぞれ不満を感じやすい階段のタイプ、設置場所を解説します。
それぞれの後悔に対する対策方法も合わせて紹介しますので、希望する階段タイプにはどんな不満が出やすいのか、ぜひ参考にしてください。
階段の設置場所で後悔「冷暖房の効率が悪い」
リビング階段は、リビングと階段の入り口が扉で仕切られていません。空間が広く開放感を得られる一方で、冷暖房効率が悪く、後悔する人が少なくありません。
例えば、リビング階段のある1階リビングでエアコンを運転する場合、冷気は下に、暖気は上に溜まりやすいという性質があります。そのため、冬は暖気が2階へ逃げやすく、夏は冷気で1階が過剰に冷える、という事態に陥りやすいのです。
解決策の一つとして検討できるのが、全館空調システムの導入です。家の中を常に一定の室温で満たすことができます。
階段の設置場所で後悔「音やニオイが上下階に広がる」
リビング階段を選ぶと、1階と2階の空間が階段でつながるため、音やニオイが上階に広がりやすくなります。1階のテレビの音が2階まで聞こえて勉強に集中できない、料理のニオイが2階の寝室に漂ってくるなど、2階での快適性に支障をきたし、後悔につながった人もいます。
冷暖房効率の対策と同様に、全館空調システムを導入すると家の中の空気を常に新鮮に保つことができるためおすすめです。また、調理で発生する蒸気や煙を素早く排出してくれる強力な換気扇を選んだり、2階の階段近くに寝室を設置しないなど間取りを工夫したりすることも有効です。
階段の設置場所で後悔「家族の気配を感じられない」
廊下や玄関ホールの近くに階段を設置すると、家族が帰宅した際に自室に直行できる作りになります。そのため、帰ってきてもリビングに顔を出さず、コミュニケーションが希薄になることがあります。
特に、子どもが思春期や反抗期である中学~高校に差し掛かったタイミングで、この点に後悔する場合があるようです。子どもが自室に友達を連れてきても、誰がいるのか分からない、様子が分かりにくいといった問題が起こり得ます。
廊下や玄関の近くに階段を作るときは下りて来る頻度が増えるよう、1階リビングにデスクや共有スペースを配置すると良いでしょう。
階段の種類で後悔「勾配が急で上り下りがしにくい」
直階段を導入したケースでは、勾配が急で上り下りがしにくい点で後悔する人がいます。勾配が急だと転落しないようにと毎回慎重になります。この点がストレスになりやすいのです。
設計の時点では「大丈夫だろう」と思っていても、実際に使ってみると想定以上の勾配だった、というケースもあります。将来のことを考慮したり、高齢の家族がいる場合には配慮も必要です。
イメージとのギャップをなくすため、実際にモデルハウスで階段を上り下りしてみると安心でしょう。不安を感じた場合には、「ステップの幅をこのくらいの広さにしたい」など希望の共有もしやすいためおすすめです。
階段の種類で後悔「設置費用が高額だった」
こだわりを優先してデザイン性の高いスケルトン階段を選ぶと、設置費用の高さで後悔するケースもあります。
パーツをすべて特注品でそろえると、既製品より費用は高くなります。まずはこだわりたいポイントを整理して優先順位をつけ、優先度の低いポイントは既製品でそろえるなど、お金をかける部分を厳選すると費用を抑えやすくなるでしょう。
階段の種類で後悔「階段が居住スペースを圧迫した」
折り返し階段など、広めのスペースが必要になる階段を選択すると、階段が居住スペースを圧迫してしまうことがあります。ステップ数を多くできるため、安全に上り下りしやすい一方で、必要な設置スペースが大きくなるのです。
建物の建築面積にあまり余裕がないのであれば、直階段やらせん階段など、省スペースで設置できる他の階段とも比較しながら検討してみましょう。
階段の種類で後悔「ステップの幅が狭く危ない」
デザイン性の高いらせん階段では、安全面で後悔することも。支柱近くにいくほどステップの幅が狭くなり、足が安定しなくなるからです。
また、らせん階段は、ステップ下の蹴込み板がないスケルトン階段タイプのものも多いため、「支柱近くに踏み込むと、すき間に足を引っかけそうで怖い」という声もあります。
ただし、ステップの幅に関する後悔は、らせん階段に限らずどのような階段でも起こります。モデルハウスなどで実物を確認し、安全面に問題ないかを確認するのがおすすめです。
階段のデザインで後悔「階段のすき間からホコリが落ちる」
スケルトン階段を選んだ場合に、階段のすき間からホコリが落ちてきて後悔した、という人もいます。スケルトン階段には蹴込み板がないため、階段のホコリがそのまま下に落ちてしまいます。
ただし、裏を返すと階段にホコリが溜まりにくいことを意味するため、必ずしもデメリットではありません。ロボット掃除機で毎日掃除できたり、階段下をこまめに掃除ができたりする環境であれば、それほど気にならないでしょう。
階段のデザインで後悔「下からの視線が気になりスカートが履きにくい」
スケルトン階段では、スカートをはくと下からの視線が気になることがあります。自分が問題ないと感じていても、来客は気にするかもしれません。
こうした点で後悔したくないのであれば、箱型階段など下からの目線を遮るタイプにするのがおすすめです。また、壁や家具、インテリアを置いて真下に人が入れないようにするといった対策もできます。
後悔しない!注文住宅の階段を考えるときのポイント
注文住宅の階段は、実際に作ってみるとイメージと違った、と後悔する人も少なくありません。では、実際の家づくりの際は、どのようなポイントを押さえておけばよいのでしょうか。後悔しないために注意しておきたい点を2つ紹介します。
デザイン性だけではなく実用性も考える
注文住宅の家づくりでは、おしゃれな家にしたいという気持ちから、ついデザインにばかり目がいきがちです。もちろん内装の印象も大切ですが、階段は毎日使う重要な部分です。設計の段階で、実用面もしっかりと確認しておきましょう。
特に、子どもやペット、高齢者がいる家族構成であれば、踏み外したりすき間から落下したりしないか確認が必要です。
使用感を図面だけで把握することには限界があるため、実際にモデルハウスで体験してみるのがおすすめです。可能であれば、家族で見学して、全員が安全に上り下りできるか確認してみてください。
デザイン性の高い階段は実績が豊富な設計事務所に依頼する
スケルトン階段や片持ち階段、らせん階段などのデザイン性の高い階段を希望するなら、実績の豊富な設計事務所に相談することをおすすめします。
階段のデザインを損ねずに、強度や安全を確保するには技術や経験が必要です。実績の豊富な設計事務所であれば、相応にアイデアの引き出しも多いため、希望通りのデザインで使い勝手の良い階段の提案を受けられます。また、コスト面でも予算を抑えて希望の内装を実現するためのアドバイスを受けられます。
完全自由設計の設計事務所であれば、細部まで細かい調整が効くため、階段のデザインに妥協したくない人にもおすすめです。
おしゃれで使いやすい階段を設置しよう
階段にはデザインや形状がいくつもあるため、家族にとってどれが使いやすいのか分からない、どのタイプが自分の住まいに適しているか悩む、という人は少なくありません。大切なのは、それぞれの特徴を把握し、最適なものを選ぶことです。毎日使うものなので、デザインだけでなく実用面も考慮して選んでみてください。
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