「木造住宅の耐用年数は22年」というフレーズはよく使われます。しかし、「もっと長く住み続けている家もあるのになぜ?」と疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。
実は住宅の耐用年数には幾つかの種類があり、実際の寿命と必ずしもイコールではありません。今回は木造住宅の耐用年数の意味や、実際の寿命の目安、建物の寿命を延ばす方法を解説します。耐用年数についての疑問・不安を解消して、家づくりを進めていきましょう。
耐用年数の定義とは
種類 | 意味 | 木造住宅の年数 |
法定耐用年数 | 課税の公平性を保つために設けられている年数 | 22年 |
物理的耐用年数 | 物理的に住居として利用できる年数 | 基準なし(目安65年) |
経済的耐用年数 | 不動産としての市場価値を持つ年数 | 基準なし(目安20~25年) |
木造住宅の耐用年数の定義は、「法定耐用年数」「物理的耐用年数」「経済的耐用年数」の3つがあります。
木造住宅の寿命を考えるときは、3つの耐用年数の意味や使い方を正しく知る必要があります。また、建物の構造(木造、鉄筋コンクリート造など)によって、耐用年数が変わる点にも気を付けてください。
それでは3つの耐用年数について解説します。
法定耐用年数
法定耐用年数とは、課税の公平性を保つために定められた耐用年数です。したがって、住宅の寿命とは本質的に関係ありません。
法定耐用年数が必要なのは、建物が時間経過とともに価値を失っていく「減価償却資産」だからです。価値が失われていく速度は建物によって違うため、木造住宅は22年、鉄骨鉄筋コンクリート造は47年などと、構造ごとに年数が設けられています。
木造住宅の固定資産税は法定耐用年数に近づくにつれて少なくなり、築22年でゼロになります。このため、法定耐用年数は固定資産としての価値を持つ期間と考えてもよいでしょう。
物理的耐用年数
物理的耐用年数とは、住居として物理的に利用できる年数です。柱や壁、屋根などの構造部分や、床、階段などは時間経過とともに劣化していきます。建物の劣化が進んで住めなくなるまでの寿命を、工学的な観点から判定した年数が物理的耐用年数です。
木造住宅の物理的耐用年数は、建築材や工法、設備、メンテナンスの頻度などによって大きく変わります。このため、法定耐用年数と異なり、木造住宅は〇〇年といった基準はありません。全く同じ家を建てても、日ごろの手入れや補修工事などによって物理耐用年数は異なります。
※出典:<参考資料>|国土交通省(p.7)
経済的耐用年数
経済耐用年数とは、建物が不動産としての市場価値を持つ年数です。つまり、不動産として売却したり、貸したりできる可能性が高い築年数です。
経済的耐用年数には基準がありません。不動産としての市場価値は、住宅の間取りや見た目、立地などによって大きく変わるからです。
しかしながら、不動産業界の慣例としての木造住宅の経済耐用年数は、20~25年程度です。また、金融機関の査定では一般的に20年となっています。
これらの経済耐用年数の根拠となっているのは、木造住宅の法定耐用年数が22年だからです。ただし、現在では、経済耐用年数を超えても市場価値のある物件も多いため、もっと実態に即した評価をしようとする動きが広がっています。
木造住宅の耐用年数は?建て替え時期はいつ?
世間には「木造住宅の寿命は22年」「木造住宅は30年サイクルで建て替えるべき」という意見があります。これらの意見は本当なのでしょうか。現実的な木造住宅の耐用年数について解説します。
木造住宅の耐用年数は22年
「木造住宅の耐用年数は22年」とよく言われるのは、法定耐用年数が22年だからです。また、法定耐用年数をベースにしている経済耐用年数が20~25年程度であるためです。
つまり、「築22年くらいで木造住宅に住めなくなる」というわけではありません。一般常識での木造住宅の平均寿命は、65年程度と言われています。また、長期優良住宅などの耐久性の高い家を建てれば、物理的、経済的耐用年数を100年程度に延ばせます(※)。
こうした事情を踏まえると、木造住宅の寿命は家づくりと、メンテナンス次第といえるのです。
※参考:「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」の策定について|国土交通省
建て替え時期はいつ?
建て替えに適したタイミングは築30年」という意見も多く聞かれます。背景にあるのは、築30年くらいで以下のようなケースが多くなるからです。
- 子どもが家を出てライフスタイルが大きく変わる
- 大規模なリフォームをするくらいなら、建て替えようと考える
- 新しい耐震基準に適合しなくなる(例:1981年の法改正など)
そのため、築30年での建て替えは、経済的に余裕がある人から支持される意見といえるかもしれません。
しかし、築30年と実際の寿命は違います。メンテナンスなどをしっかり行えば60年以上住めますし、構造によってはそれ以上の年数も可能と考えておきましょう。
住宅の劣化を判断するには?
木造住宅の寿命を考えたり、建て替え時期を見極めたりするには、住宅の劣化を正しく判断する必要があります。劣化具合を判断できれば、寿命を延ばす対策も考えやすいでしょう。
住宅の劣化を判断するための具体例を以下に紹介します。
場所 | チェックポイント |
外壁 | ・モルタルやサイディングは10年周期で劣化状況をチェック・塗料のはげや雨水の侵入がないか調べる |
屋根 | ・劣化しやすいコーキング材(隙間部分のゴム状の充填剤)に要注意 |
水回り | ・使用頻度が多く、湿気がこもりやすい部分を重点的に調べる |
フローリング | ・床がきしんだり、沈んだりすることはないか、傷や汚れが目立たないか |
建具 | ・破損や故障のチェック |
劣化状況を早めにつかめれば、他の部分に影響が及ぶのを未然に防げます。また、劣化の進み具合を知っておくと、補修やリフォームの計画を立てやすくなり、結果的に寿命を延ばすことにもつなげられます。
住宅を守る大切な屋根!その種類と選び方についての記事はこちら
注文住宅の水回りの決め方とは?間取りのポイントや注意点を紹介の記事はこちら
建物の寿命を延ばすには?
ここからは日々のお手入れやメンテナンスなどによって、木造住宅の物理的、経済的な耐用年数を延ばす方法を紹介します。家づくりの段階で検討しておきたい内容もありますので、「まだ先のこと」と考えず、全体の内容を知っておくとよいでしょう。
こまめに手入れをする
こまめなお掃除は住宅の寿命は延ばします。カビやホコリ、料理中に飛び散った油などを日ごろから取り除いておけば、建築材や設備が傷むスピードを遅らせられます。
特にお手入れを重視したい場所は、水回りと雨どいです。水回りは使用頻度が高いうえに湿気がこもりやすいため、カビが発生していないか、壁や床が湿ったままになっていないかなどを、こまめにチェックしましょう。
また、雨どいは落ち葉や土埃による詰まりに要注意です。決まった場所に排水できなければ、外壁や屋根などが傷んでしまいます。少なくとも年1回は雨どいを確認することをおすすめします。
メンテナンスを定期的に行う
自分でできるメンテナンスを定期的に実施することも重要です。車や洋服などはしっかりメンテナンスする人でも、住宅はほったらかしで耐用年数を短くしてしまうケースが珍しくありません。
例えば、床にワックスを塗る、ドアの蝶番(ちょうつがい)に油をさす、壁クロスを市販の接着剤で補修するなどは、誰でもできます。少し手間に感じるかもしれませんが、こうしたメンテナンスが家の寿命を延ばすのです。
専門家に定期点検を依頼する
こまめな手入れやメンテナンスと平行して、専門家への定期点検も依頼するとよいでしょう。自分で点検しにくい部分は、屋根や床下など数多くあります。また、壁材やタイルなど、一般の人がみても劣化状況がよくわからない材質も多いためです。
定期点検は場所にもよりますが、3~5年に1回程度してもらうと安心です。定期点検をすれば、早めに劣化や破損を発見できるため、家へのダメージを少なくできます。また、費用面でも安く済むケースが多いでしょう。
定期検診は家を建ててもらったハウスメーカーや工務店に依頼するのが一般的です。しかし、無償期間を過ぎた後は、リフォーム業者など別の業者に頼む方法もあります。
リフォームをする
築年数が長くなってくると、リフォームの必要が出てきます。例えば、キッチンやトイレ、浴室、洗面などの水回り設備は、10~20年でリフォームするのが一般的です。また、内装のクロスも見た目にこだわる場合、10年に1回程度張り替えるとよいでしょう。
しかし、リフォーム費用はそれなりの金額になるため、優先順位を考えることが重要です。寿命を延ばす観点から考えると、構造躯体の耐久性に影響する雨漏りや、シロアリ被害などの問題が出ている箇所は真っ先に直したいところです。先延ばしすると、連鎖的に家にダメージが出て、寿命が短くなりかねません。
地盤対策をする
地盤対策も建物の寿命を延ばすポイントです。いくら建物がしっかりしていても、地盤が弱いと災害時に被害が大きくなってしまいます。
具体的には、地震の揺れが大きくなって壁や柱がゆがんだり、地盤沈下や液状化現象が発生したりします。また、台風によって床下浸水が発生するケースもあります。
こうしたトラブルを防ぐには、家づくり前の準備が大切です。土地選びからはじめる際は、ハザードマップで災害の危険度を調べておきましょう。また、地盤調査や地盤保証が充実しているハウスメーカーを選ぶのもよい方法です。
各ハウスメーカー・工務店のアフターサービスを確認する
木造住宅をよいコンディションに保つためには、ハウスメーカーや工務店のアフターサービスが欠かせません。重要なチェックポイントは以下の3つです。
- 保証期間:住宅品質確保法で定められた保証期間は10年間ですが、さらに長期保証を提供している業者もあります。最長で何年まで延長できるか確認しておきましょう。
- アフターサービスの内容:主要構造体部分のみ点検、補修する業者もあれば、水回り設備や電気設備なども含めて点検、補修してくれる業者もあります。対応範囲をよく確認しておきましょう。
- アフターサービスを受ける条件:有償点検を受けていないと補修が受けられなかったり、主要構造部分以外の点検は有償になったりするなど、細かな条件があります。不明な部分があるときは、早い段階で確かめておきましょう。
木造住宅の耐用年数は工夫次第で延ばせる
木造住宅の耐用年数は22年や30年などと言われますが、実は日々のお手入れやメンテナンスによって、もっと長く延ばせます。耐久性の高い構造や地盤対策、定期点検などと組み合わせれば、60年以上住み続けることも十分可能です。
耐用年数について気になる人はフリーダムアーキテクツにぜひご相談ください。フリーダムアーキテクツの家づくり相談窓口やオンライン相談窓口では、注文住宅の家づくりに関するお悩みや不安を、何でもご相談いただけます。
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