玄関は、家族以外の人の目にも付きやすいため「家の顔」と呼ばれるとも呼ばれます。
ですから常に片付いたきれいな状態を保ちたいところですが、収納スペースが不十分だと、靴や傘などが外にあふれて雑然とした印象になりがちです。
理想的な玄関収納をつくるには、玄関収納のタイプや種類とその特徴を知っておくことが大切です。また収納したいものの量やライフスタイル、生活動線など、玄関収納で考えておきたいポイントはさまざまなに存在します。
この記事はこれらのコツについて解説しています。靴や傘、自転車などをすっきりと、かつ使い勝手よく収納するために、ぜひ最後までご覧ください。
Contents
①ボックス形式玄関収納の特徴とメリット・デメリット
ボックス形式の玄関収納とは、箱型の収納を壁に設置したものです。玄関や廊下から浮かせたり、縦に細長い収納を設置したりする場合は、壁に固定する工事が欠かせません。しかしそうではない場合は、床置き型も選べます。
ボックス形式の玄関収納に共通したメリットは次のとおりです。
- 扉があるので「隠す」収納ができる
- 箱型のシルエットがスタイリッシュに見える
一方、注意点もあります。
- 靴に合わせて奥行が浅いタイプが多いため、ベビーカーやアウトドア用品など大きなものの収納には不向き
- 扉があるため開け閉めが必要で、湿気がこもりやすい
ボックス形式の玄関収納は種類が豊富で、収納量やしまうものによって形を決められます。次項から5つの種類について、それぞれ特徴やメリット・デメリットを解説します。
(1)カウンタータイプ
カウンタータイプとは、ロータイプとも呼ばれ、高さが低い日本のげた箱に最も近い種類です。
【メリット】
- 高さが低く圧迫感を感じにくい
- 天板上に小物入れや花瓶などを置くなど、さまざまな活用が可能
【デメリット】
- 収納力があまりない
- ブーツや傘など長いものを収納しづらい
カウンタータイプには、玄関から廊下に渡って設置する横長タイプもあります。スペースがある場合は、十分な収納と解放感を両立できるでしょう。
(2)トールタイプ
トールタイプは、天井までの高さがある種類です。
【メリット】
- 収納量が多い
- ブーツや傘など長さのあるものを収納しやすい
【デメリット】
- 圧迫感が出やすい
トールタイプは大家族の世帯や靴の数が多い世帯に選ばれている種類です。圧迫感が気になる場合は、薄めの色を選んだり壁や他の部材と色を統一したりすると和らぎます。
(3)ニの字タイプ
ニの字タイプとは、天袋(天井面に接した場所に設けられる戸棚)と下部収納(カウンタータイプ)で構成される種類です。
【メリット】
- カウンタータイプのよさを残しながら収納量を増やせる
【デメリット】
- 天袋の収納の出し入れがしにくく、日常的に使うものを入れにくい
ニの字タイプは「カウンタータイプだけでは収納スペースが足りないけど、トールタイプほどの容量は必要ない」「収納スペースは確保したいけれど、圧迫感を減らしたい」という場合におすすめです。
(4)コの字タイプ
コの字タイプは、トールタイプとニの字タイプを組み合わせたもので、カタカナの「コ」のように見えることからコの字型と呼ばれています。
【メリット】
- 収納量が多い
- 縦長部分の扉に全身を映す鏡を付けられる
【デメリット】
- トールタイプとほぼ同じスペースが必要
コの字タイプは収納量が二の次タイプより増えますが、圧迫感もそれだけ大きくなります。収納量をどこまで増やしたいかが選ぶ際のポイントとなるでしょう。
(5)ロの字タイプ
ロの字タイプとは、トールタイプとニの字タイプを「ロ」の字のように組み合わせたものです。
【メリット】
- 両端の収納があるので、レインコートやほうき、塵取りなど多くのものを収納できる
- 中の空洞部分に絵や花瓶などを置くと見た目が映える
【デメリット】
- コの字型タイプと同様、ある程度スペースが必要
コの字タイプと同様にロの字タイプも鏡を設置できます。
②シューズクローク形式玄関収納の特徴とメリット・デメリット
シューズクローク形式の玄関収納は、ボックス形式とは異なり、玄関収納として別スペースをつくります。このスペースは玄関に隣接しており、土間のように靴を履いたまま移動できるのが特徴です。
シューズクローク形式のメリットとしては、以下が挙げられます。
- ベビーカーやアウトドア用品などを、大きさや高さを気にすることなく収納できる
- ボックス形式に比べて大容量
- 玄関がすっきりする
一方、注意点もあります。
- 玄関横に約1帖以上のスペースが必要
- ほこりや汚れが溜まりやすい
- 匂いがこもりやすい
このように一長一短あるので、ライフスタイルに合わせて選んでいくとよいでしょう。
シューズクローク形式には、出入り口が1つの「ウォークインタイプ」と、出入り口が2カ所あり玄関からリビング・キッチンなどに通り抜けられる「ウォークスルータイプ」の2種類があります。それぞれの特徴やメリット・デメリットを解説します。
(1)ウォークインタイプ
ウォークインタイプは、出入り口が1カ所で通り抜けができない独立した収納タイプです。
【メリット】
- 大きなものを含めて大容量の収納ができ、何を収納しているのかも一目でわかる
- 玄関から見える部分をきれいに保てる
【デメリット】
- 玄関と扉で仕切らないと、来客者に丸見えになってしまう
- 間取りを工夫しないと動線が悪くなる
ウォークインタイプは1帖ほどのスペースがあれば設置可能で、靴のほかにベビーカーや外用の玩具など、色々なものを収納できます。
(2)ウォークスルータイプ
注文住宅の家づくり | CASE753円佇の家(えんていのいえ)
ウォークスルータイプは、通り抜けできるように出入り口を2カ所設けたタイプです。例えば買い物から帰った際に、玄関→ウォークスルータイプ→キッチンのように最短ルートで荷物を運べます。
【メリット】
- 生活動線がよくなる
- キッチンとつなぐ場合はパントリーとの兼用が可能
【デメリット】
- ウォークスルータイプより収納力が劣る(出入り口が2カ所あり壁面が少ないため)
- ウォークインタイプよりもさらに広いスペースが必要
ウォークスルータイプは便利な反面、他の居室スペースが削られる場合があるため、面積に余裕がある土地向けといえるでしょう。
設置の仕方で空間の見え方が変わる!設置方法のタイプ
玄関収納は設置方法の違いで床置きとフロートタイプに分かれます。床置きとは、玄関のたたき、あるいは玄関の床に玄関収納を直接設置し、収納下にすき間を作らない置き方です。
どっしりとした安定感はあり、すき間がないため掃除も楽ですが、収納下の空間を有効活用することができません。収納に使えるスペースは玄関収納の内部だけになります。
床置きの玄関収納を設置すると、収納スペースと玄関が完全に分かれてしまうため、玄関の面積が狭くなり使い勝手が悪くなる可能性もあります。
一方、フロートタイプはその名の通り、たたきや玄関の床から浮かせて玄関収納を設置するタイプです。収納下を活用できる上に、オーソドックスな形の玄関収納をおしゃれに見せる効果も期待できます。
収納下を利用できるため、上手に活用すれば収納力がアップしますが、出入りの多い玄関では収納下にほこりが溜まりやすいという欠点があります。
しかし、収納下に空間があると実際よりも広く見えるので、トール型の玄関収納を置くときでも圧迫感を減らすことができます。玄関収納の設置方法は、玄関の広さや収納する靴の量などによってどちらにするかを決めるとよいでしょう。
玄関収納を考えるポイント
玄関収納を考える際には、収納スペース=収納力ではないと知っておくことと、収納量を事前に見積もっておくことが大切です。それぞれのポイントについて解説します。
収納できるスペースの大きさと収納力はイコールではない
玄関収納に必要な収納力は、普通の形の靴を何足収納できるかだけでは計れません。サイズの大きな靴や、ブーツのような高さのある靴も収納できて初めて満足度の高い玄関収納になります。
そのため、玄関収納では収納できるスペースの大きさと収納力は必ずしも一致しないということをよく覚えておきましょう。
玄関収納にしまうものを考える
玄関収納を考える際には、いかに広い収納スペースを確保するかではなく、収納量に合った広さを考えることが大切です。いくら大容量の玄関収納をつくっても、広すぎればデッドスペースとなり、他の空間が狭くなってしまいます。
新居での収納量を見積もる際は、次の4つの観点から洗い出すとよいでしょう。
- 現在、玄関に収納しているもの
- 現在、玄関にしまいたいけれど、物置や外など別の場所に収納しているもの
- 将来増えそうなもの(新しい靴、趣味関連のものなど)
- ライフスタイルの変化で増えそうなもの(子どもが生まれたときのベビーカーなど)
なお玄関は湿気がこもりやすいため、換気対策をすればしまっておけるものなのかも検討しておきましょう。
玄関収納の間取り実例
ここからは玄関収納をより具体的にイメージできるように、実際の施工事例を紹介します。いずれも設計の自由度が高い注文住宅のメリットを生かして、ライフスタイルや土地の条件に合わせた理想的な玄関収納を実現しています。
実例①室内までのアクセスが便利なシューズクロークのある玄関
こちらのシューズクロークは、室内へとスムーズにアクセスできるウォークスルータイプです。室内用と室外用の収納スペースを区別することで、使い勝手よく整理できるようになっています。また、自転車も置ける広いスペースも確保しました。玄関とシューズクロークの壁はモルタルで、土の汚れやほこりなどが目立ちにくいようになっています。
実例②空間を有効活用しながら収納スペースを確保した玄関
こちらの家は狭小地に立つ3階建ての住宅です。限られた空間を有効活用するために、シューズクロークの間取りにリビングの吹き抜け階段下を選びました
このスペースの土間を広げて、ウォークスルータイプのシューズクロークを設けることで、自転車も置ける大容量の収納スペースを確保しています。また、スケルトン階段にすることで視線が縦に抜け、圧迫感が出にくくなっています。
家族のライフスタイルに合った玄関収納選びをしよう
玄関収納はただ大きければ使いやすいというものではありません。家族のライフスタイルに合わせて、カウンタータイプやウォークスルータイプなど最適な種類を選んでいきましょう。
また、満足度の高い玄関収納にするためには、広い収納場所を確保するのではなく、家族の人数や靴の量に見合った大きさの収納を選ぶことも重要です。子どもの誕生や親との同居など、将来の暮らしもイメージしておくと、ゆとりを持った玄関収納をつくれることでしょう。
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