GOETHEvol.2
Q. 41歳・バツ1・子供なし・猫2匹なら、
賃貸マンション? それとも中古マンション?
Text=牛丸由紀子 Photograph=星 武志 Illustration=モーリー☆ワイド
その答えは「中古マンションをリノベーションする」だ。
そう、「Q.」の例は正真正銘僕のこと。新築の住宅設計を生業にする僕が、なぜその選択なのか? 僕の神戸の家を実例に説明しよう。
大きな要因は、僕自身のライフスタイルにある。東京と神戸に拠点があるため、住まいは交通至便で、メンテナンスも楽なほうがいい。景色も重視。そして将来の家族構成が不明(笑)なので、家を資産価値として追求せず、コストもかけたくない。となると一戸建てはなし。また、マンションなら「新築」も選択外に。前回、マンションの資産価値に触れたが、新築も2年たてばすでに〝中古〞。売却金額はグッと下落する。ありきたりな間取りや内装にも満足できないから、僕にとって「新築」は結局意味がないのだ。
となると「賃貸」か「リノベーションできる中古を購入」の選択に。資産価値と捉えていないので、15年程度で償却すると考え、当時居住中の賃貸マンションと、中古マンションを購入した場合を比較。賃貸料は月15万円×15年で2700万円。分譲マンションは共益費など(3万円/月)+固定資産税(15万円/年)が発生するので、必要経費は15年で765万円と試算。したがって2700万円-765万円の1935万円なら、同レベルの支払いとなる。そこでリノベーション費用を500万円と想定し、残りの1435万円で中古を物色。
結果、84㎡・駅近・神戸の夜景つき(!)の物件を予算内で手に入れた。築30年以上だが劣化や耐震性はプロの目で確認済み。内装も思いどおりに変え、大満足。2匹の猫もノビノビと暮らしている。
とはいえ、家を『資産価値』の視点で考えれば、間違いなく「土地があること=一戸建て」のほうが格段に強い。だからこの中古+リノベーションは、例えば複数のビジネス拠点を持っている、自宅とは別の自由な空間を持ちたい……そんなライフスタイルを求める人へのひとつの提案。例えば、お気に入りの車を500万円で購入するように、500万円のリノベーションで、オトコの遊びを家に施すという考え方なのだ。
でもこの考えは、実は新築戸建てにも生きてくる。家造りも、すべて資産価値という観点で捉えると味気ないものになってしまうが、間取りや内装のために「自分が遊べる費用」を決めておけば、さらに豊かな空間を生みだすことができるのだ。
僕も今後、家族構成が変わることがあれば、きっと一戸建てを建てるだろう。その時このマンションは? ちゃんと残すつもり、もちろん僕だけの自由な〝別宅〞としてね(笑)。
■GOETHE (ゲーテ)
仕事を充実させ、その哲学を人生に反映させている人間たちの
物語を凝縮した、ライフスタイルマガジン
月刊誌:毎月24日発売 発行: 幻冬舎
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