「平屋は耐震性が高い」と聞き、建築を検討している方も多いのではないでしょうか。日本は地震大国と呼ばれるほど地震が発生しやすいため、地震に強い家を建てることは安全性の観点から考えても重要です。
この記事では、平屋が地震に強いかどうかの真偽と理由を踏まえつつ、構造別の特徴や耐震性、平屋の耐震性を高めるポイントについて解説します。また、耐震性以外の平屋の魅力にも迫るので、ぜひご一読ください。
平屋は地震に強い?
平屋が地震に強いかどうかの真偽を確かめるためには、実際に起こった地震の被害実態を押さえておくことが大切です。
国立研究開発法人建築研究所が公表している調査報告書によれば、2016年に発生した熊本地震は2階建ての家だけではなく、平屋にも大きな被害をもたらしています。
「平屋は2階建ての家より地震に強い」というイメージを抱いている方も少なくありませんが、実際のところ平屋の耐震性は構造や間取りに寄ります。平屋の施工実績が多いハウスメーカーによく相談し、地震に強い家づくりをすることをお勧めします。
出典:建築研究資料No.173号「平成28年(2016年)熊本地震建築物被害調査報告(速報)」5.3-26頁、5.2-1頁|国立研究開発法人建築研究所
なお、耐震基準については以下の記事で解説しています。
耐震性能が住宅を守る!建てる前に必ず知っておきたい基準とポイント
基本的には平屋が地震に強い理由
先述の通り、平屋が必ずしも地震に強いとは限りませんが、同じ条件下なら2階建て以上の家より平屋のほうが耐震性に優れていることは事実です。
平屋の耐震性が高い理由としては、以下のような内容が挙げられます。
・構造がシンプルなため倒壊しにくい
・高さがないため揺れにくい
理由の詳細を述べつつ、地震保険に関する注意点も解説するので、きちんと押さえておきましょう。
構造がシンプルなため倒壊しにくい
1階部分のみで成り立っている平屋は、2階建てや3階建ての家より構造がシンプルであり、なおかつ正方形や長方形で建てられている傾向にあります。
地震や強風によって外部から縦方向・横方向の強い力が加わった場合、基本的に家の形状が整った四角形に近いほど、振動は分散しやすくなります。分散で弱まった振動に対し、柱が家全体を支えてくれるため、結果的に倒壊のリスクを軽減できるのです。
一方、ロの字やコの字など建物の構造・形状が複雑になると、振動のエネルギーが1ヶ所に集中しやすくなるので、その部分から家が崩れてしまうリスクが高まります。地震などの災害対策をしっかり行いましょう。
高さがないため揺れにくい
平屋は1階部分しかないため、2階建て以上の家より重心が低い建物です。建物の揺れは地面から離れるほど大きくなるため、高さがない平屋は揺れにくい傾向にあります。
高層マンションをイメージすると理解しやすいかもしれませんが、地面から離れた高階層は揺れも増大する傾向にあります。地震や強風による大きな振動だけではなく、電車の走行や弱風による小さな振動でも揺れやすいため、より不安を感じやすいでしょう。
また、建物上部が重いほど揺れやすくなりますが、平屋はそもそも2階以上の部分がないので、揺れと建物へのダメージを抑えることができます。2階建て以上の家が必ずしも地震に弱いわけではないものの、構造的な性質から平屋のほうが耐震性は高いといえるでしょう。
耐震性が高い構造は?
耐震性を考える場合、平屋や2階建ての違いだけではなく、どのような構造だと地震に強くなるのか気になるところではないでしょうか。
一般的な注文住宅の場合、構造は大きく分けて以下の3種類です。
・鉄骨
・鉄筋コンクリート(RC)
・木造
構造別の特徴や耐震性についても解説するので、ぜひチェックしてみてください。
鉄骨
鉄骨造とは、柱や梁といった骨組み部分に鉄骨を用いた構造です。
鉄骨は木材より強度が高いうえ、地震発生時は鉄がしなって振動のエネルギーを吸収してくれるので、耐震性に優れています。建材の品質が安定している、工期や費用を抑えやすいといった点も強みです。一方、鉄骨は熱に弱いので、耐久性が低い傾向にあります。
また、鉄骨には複数の種類があり、建物の種類によって使い分けられていることも特徴です。戸建て住宅の場合、主に軽量鉄骨が使用されています。
鉄筋コンクリート(RC)
鉄筋コンクリート造とは、鉄筋とコンクリートが一体化した建材で骨組み部分をつくる構造です。「RC造」とも呼ばれています。
鉄筋コンクリートの建物は地震の揺れを感じやすいものの、耐震性そのものは優れており、倒壊のリスクは低めです。また、耐火性・気密性・遮音性にも優れています。
さらに、耐用年数が長い点も大きな強みです。戸建て住宅は数十年にわたって住み続けるので、メンテナンスが少なくて済む点も強みといえます。
一方、鉄筋コンクリート造は工期や費用がかさみやすい、間取りの自由度が低いといった難点もあります。
木造
木造とは、木材で骨組み部分をつくる構造です。日本の建物で多く採用されている構造ですが、大きく分けて以下の3種類があります。
・木造軸組工法
・ツーバイフォー工法
・木造ラーメン工法
木造軸組工法とは、日本で昔から用いられている伝統工法です。柱に梁を通して筋交いで補強しつつ、空間上の点を結ぶように建物構造を築きます。建築の自由度が高く、さまざまな間取りやデザインを実現できる点が強みです。
ツーバイフォー工法とは、2インチ×4インチの角材と合板を使って壁・床・天井を築き、箱型の空間をつくる工法です。点と線ではなく面で支える性質上、木造軸組工法より耐震性に優れています。
木造ラーメン工法とは、鉄骨造や鉄筋コンクリート造で用いられてきた「ラーメン構造」を木造に取り入れた工法です。柱と梁が一体化したフレームを使い、建物構造を築きます。
木造軸組工法の自由度とツーバイフォー工法の耐震性を両立した工法であり、注文住宅での採用事例も増えています。
木造の平屋の耐震性を高めるポイント
平屋で建てられている注文住宅の多くは木造なので、それを踏まえて地震への対策を検討する必要があります。
木造の平屋の耐震性を高めるためには、以下のポイントを実践しましょう。
・耐震等級3以上を確保する
・地盤の強い土地に建てる
・壁を増やし屋根を軽くする
それぞれ詳細も解説します。
耐震等級3以上を確保する
より耐震性に優れた平屋を建てる場合、耐震等級3に対応したハウスメーカーや工務店を選ぶ必要があります。
耐震等級とは、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」で規定されている、住宅の耐震性の指標です。以下の3段階に分かれており、等級ごとに求められる耐震性が変わります。
・耐震等級1:震度6〜7の地震で倒壊しない程度
・耐震等級2:震度6〜7の1.25倍の地震で倒壊しない程度
・耐震等級3:震度6〜7の1.5倍の地震で倒壊しない程度
参照:国土交通省~新築住宅の住宅性能表示ガイド|国土交通省住宅局住宅生産課
建築基準法上の最低限の基準である耐震等級1をクリアすれば、平屋を建てることはできます。しかし、今後起こるかもしれない大地震に備えたいなら、耐震等級1が想定する1.5倍の地震にも耐えうる耐震等級3以上は確保したいところです。
地盤の強い土地に建てる
地盤の強い土地を選ぶことは、平屋の耐震性を高めるための前提条件です。建物自体の耐震性をどれだけ高めても、その下にある地盤が脆弱だと、地震で大きなダメージが発生しやすくなります。
注文住宅を購入する場合、基本的に土地の地盤調査を行いますが、売主が過去の地盤調査報告書を保管している場合、前もって確認させてもらうのも一案です。
また、自治体によっては地震の予測震度や被災想定区域、避難場所などをまとめたハザードマップが公開されています。自治体のホームページなどで閲覧できるため、そちらも要チェックです。
壁を増やし屋根を軽くする
耐震性の向上を図るためには、平屋自体の構造や設計を工夫することも重要です。
例えば、木造平屋住宅なら「耐力壁」の数を増やすと、耐震性を高めることができます。耐力壁とは、建物自体の重量による「水平荷重」と地震の横揺れなどによる「水平荷重」の両方に抵抗することで、建物を支えてくれる壁のことです。
また、屋根の重量を軽くすれば、地震の揺れ自体を抑えることもできます。硬く重い瓦より軽量のスレートを屋根材に選んだほうが、地震のダメージを軽減しやすいでしょう。
壁材や屋根材の選定については専門的な知識も求められるので、ハウスメーカーの担当者や設計士と入念に相談することを推奨します。
耐震性以外の平屋の魅力
平屋は耐震性に優れているだけではなく、以下のような魅力も持っています。
・バリアフリーを実現できる
・家族のコミュニケーションが増える
・家事動線がスムーズになる
・開放感のある空間を創出できる
こちらも各自詳細をまとめました。
バリアフリーを実現できる
平屋は1階部分のみという性質上、原則として階段がありません。そのため、高齢者向けのバリアフリー設計に対応しやすい点がメリットです。階段をスムーズに昇降できる若い世代でも、老後に苦労しないよう平屋を選ぶ方は数多く見受けられます。
また、子どもが階段から転落するリスクを未然に防げるため、バリアフリーの平屋は子育て世帯にとっても有用といえるでしょう。
家族のコミュニケーションが増える
平屋は家族全員が1階部分で過ごすので、お互いに顔を合わせる機会が多くなります。自然とコミュニケーションをとる機会も増えるため、良好な家族関係を保ちやすいこともメリットです。
「一人の時間をつくりにくいのでは?」と不安を感じるかもしれませんが、スキップフロアやヌックを設けることで、プライバシー性の高い空間を確保できます。同じフロアでも間取りで生活の変化をつけることは可能なので、家族の時間と一人の時間をしっかり両立できるでしょう。
家事動線がスムーズになる
先述の通り、平屋は階段がなく1階部分だけで生活できるため、スムーズな家事動線を確保しやすいこともメリットです。
例えば、ランドリールームと物干し場を同じフロアに設置できるので、洗濯のたびに階段を上り下りする必要がありません。掃除も1階部分だけで完結するため、気軽に実施しやすいでしょう。
家事の効率化を図ることができれば、家族で過ごす時間や趣味に費やす時間が増えるので、より充実した人生を実現できるでしょう。
開放感のある空間を創出できる
平屋は家全体が1階部分に収まるので、2階建ての家にはない水平に広がる空間を実現できます。そのため、開放感のある空間を生み出せることがメリットです。
また、天井の高さや勾配屋根を活かした個性的なデザインを採用したり、自然光を採り入れる大開口を設置したりすることで、よりおしゃれで快適な住まいを実現できます。
地震に強い平屋で家族の安全を守ろう
耐震性に優れた高い平屋を建てることで、地震がもたらすリスクを抑えつつ、家族のコミュニケーションが生まれる理想の住まいを実現できます。バリアフリー化や家事の効率化にもつながるため、前向きに検討したいところです。地震に強い家づくりのノウハウを理解し、納得できるマイホームを建てましょう。
平屋住宅の建て方に関しては、以下の記事でも詳しく解説しているので、ぜひお読みください。
無料の注文住宅のカタログ・作品集はこちら
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