注文住宅を建てるには土地取得金や着手金、中間金など段階ごとにまとまったお金が必要になります。
しかし、住宅ローンは原則的に家が完成したときの一回のみ実行されるものです。
注文住宅では家の着工前に土地を取得しておく必要があるため、まとまった資金がなければ建てることができません。
そこで、本来は1回払いである住宅ローンを分割して段階ごとに融資する「分割融資」という方法が取られています。
今回は、分割融資のしくみともう1つの融資方法である「つなぎ融資」との違いについて解説します。
住宅ローンの分割融資とは?
土地を購入し注文住宅を新築で建てる場合、一般的に「土地購入時(土地取得金)」「建物着工時(着手金)」「建物建築中(中間金)」「建物完成時(残金)」の4つの段階に応じて資金が必要になります。
建てる家のグレードや立地環境にもよりますが、「土地代金:1500万円」「建物建築代金:2000万円」の家であれば、土地取得金・着手金・中間金がそれぞれ750万円、残金として500万円を支払うのが一般的です。
これ以外にも土地取得時の不動産会社への仲介手数料や建築中の諸経費、火災保険費用など別途でまとまった資金が必要になります。
これらの資金をすべて現金で用意できれば問題はありませんが、多くの人は用意することが難しいでしょう。そこで、利用するのが「住宅ローンの分割融資」です。
住宅ローンは通常、建物が完成したときに一括払いで融資が実行されるのが原則になります。しかし、住宅ローンを使って土地を購入した後に注文住宅を建てる場合、先行して土地代金の支払いが発生します。
そして、少なくとも2回以上の実行が必要になるため、住宅ローンの総額を複数回に分けて実行するのです。これを「分割融資」といい、多くの人が利用している銀行融資の方法です。
また、土地に住宅ローンを使わず、建物だけに住宅ローンを使う場合もあります。
この場合でも、建築会社への支払いは契約時(着工時)、上棟時、完成時などに分けて支払う必要があるので、自己資金が足りない場合には、住宅ローンの実行を建築会社の支払い条件に応じた形に整えなければいけません。
そこで、建築会社が資金を必要とするタイミングで支払えるように調整するのが分割融資です。
分割融資の内容とは?
分割融資の契約内容は金融機関ごとにかなり違いがあります。具体的な違いとしては「分割実行の回数」「適用金利」「返済のタイミング」などです。
まず、分割実行の回数とは「いつ、どのタイミングで何回の融資が受けられるか」という意味です。「土地の引渡時に1回、建物の完成時に1回」など各金融機関によって制限が設けられている場合があるため注意しましょう。
次に、適用金利にも大きな違いがあります。原則としては、分割実行される時点の金利(店頭表示金利)がその都度適用される形式が多いですが、固定金利の金融機関もあります。適用される金利によって将来的な返済額が大きく変わるため慎重に選択しましょう。
返済のタイミングに関しては、住宅ローンが分割実行されるごとに融資金額分の住宅ローン返済が始まる銀行が一般的です。
もっとも、予定している融資の実行がすべて完了し契約が一本化されるまでは、利息の返済だけの銀行もあります。
金融機関によってまとまった資金が必要になるタイミングは異なるので、融資実行までのスケジュールをしっかりと確認しておくことが大切です。
このように金融機関によって「分割実行」の取り扱いにかなりの違いがあります。
建築会社を選定する際の制約にならないように、各金融機関の情報を集めておきましょう。銀行によっては、そもそも分割融資を行っていない銀行もあるので注意が必要です。
金利の選択や諸経費について
分割融資の契約内の違いは実行の回数や適用金利だけではありません。
「金利の選択」「金銭消費貸借契約の方法」でも違いがあります。まず、金利の選択では金融機関によって、「分割実行の度にその都度、変動金利や固定金利を選択できる場合」や「1回目の実行で選択した方をその後は変更できない場合」などがあります。
さらに、「分割実行を利用する場合は固定金利が利用できない場合」などもあるため、自分が利用する予定の銀行ではどのような形式の金利が適用されるのかしっかりと確認しておきましょう。
また、金銭消費貸借契約の方法に関しても、分割実行の度に金銭消費貸借契約(ローン契約)を結ぶ金融機関や、総額のローン契約を結んだら、その後の分割実行は申込書など手続きで済む金融機関などがあります。
これらの違いは「返済総額の違い」「返済のタイミング」「手数料の負担」「審査に必要な時間」となって現れます。どの銀行のどの分割融資がいいのかは個人差があるため、自分にとって最適な金融機関の分割融資を選択しましょう。
また、分割実行には必要な諸費用があります。例えば、金銭消費貸借契約を結ぶ際の融資手数料や金銭消費貸借契約書に貼付する印紙代などです。金銭消費貸借契約を結ぶ回数が増えると、その分これらの費用が増えるので注意しましょう。
その他にも、土地と建物の登記を分けた場合には抵当権設定登記(担保設定)の手数料が二重にかかります。原則として、土地の引渡時(決済)と建物の完成引渡時の実行時に、抵当権設定登記を行うので資金が必要になるタイミングをきちんと把握しておきましょう。
つなぎ融資との違いは?
分割融資と似たような融資方法に「つなぎ融資」というものがあります。つなぎ融資とは、金融機関が住宅ローンとは別に行う短期融資のことです。
住宅ローンの総額を分けて実行する分割実行とは異なり、別途、審査を行い短期的に融資を行う方法になります。注文住宅の建築には、状況に応じて追加の資金が必要になる場合があります。そこで、建築会社に途中で支払う額の不足分をつなぎ融資を使って補うのです。
他にも、土地の代金はつなぎ融資で支払い、建物の代金は分割融資を組むといった形で組み合わせることもできます。つなぎ融資のメリットは「担保が必要ない」という点です。一方、分割融資の契約には抵当権が必要で登記費用などの手数料が別途必要になります。
非常に便利なつなぎ融資ですが、1点だけ注意する必要があります。それは、適用金利や手数料が割高という点です。分割融資では住宅ローンの一部として借りるため金利が低く設定されています。
しかし、つなぎ融資は住宅ローンとは関係のない一時的な融資のため、金利が高めに設定されているのです。実際に、どれぐらいの差が出るのかをきちんと計算した上で、分割融資とつなぎ融資のどちらが有利かを判断しましょう。
メリットとデメリットを比較して決めよう!
注文住宅を建てるときにはかなり大きな金額が必要になります。多くの人にとって人生最大の買い物となるので、「どのようにして購入するか」という点は非常に重要なポイントです。
住宅ローンを組むとしても、分割融資とつなぎ融資のどちらで契約するのか、それとも両方を組み合わせるのかなど契約内容は多種多様です。それぞれの経済状況に応じて、メリットとデメリットを比較し、慎重に検討した上で契約をしましょう。
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