LiVES2016年2月号
その土地を買ってはいけない?
変わる土地選びの常識
昨年の秋に発覚した、マンションにおける杭打ちデータの改ざん問題は、住まいにおける地盤の大切さを広く知らしめ、今後の不動産選びに大きな影響を与えそうだ。かねてから「本当に安全な家かどうかは地盤で決まる」ことを提唱してきた地盤ネット代表取締役の山本強氏にお話を伺った。
「マンションの杭打ちデータ改ざん問題、鬼怒川の氾濫による水害や、広島の土砂災害といった話題が続き、住宅の立地や『地盤』に関する注目が高まっています。これは一過性のものではなく、教訓として活かしていかねばなりません」
と語るのは、昨年12月に「その土地を買ってはいけない」というショッキングなタイトルの著書を出版した「地盤ネット」代表取締役の山本強氏。山本氏はかねてから、駅からの利便性や日当りといった上辺だけの条件による土地の選び方に警鐘を鳴らして来た。横浜のマンションの一件は建設工事における人為的なミスが原因だが、一般的に流通している土地でも、建物が傾いたり、浸水したりする可能性をはらんでいる。
購入しようとしている土地がどんな土地か、事前に診断することはできないのか? 地盤ネットでは、土地の災害リスクを点数で表す「地盤カルテ」「地盤安心マップ」を無料のサービスとしてネットで公開。地盤カルテは、公開後僅か10ヶ月で累計10万件を突破したというのだから、その注目度の高さが伺える。カルテは、調べたい地点の浸水リスク、揺れやすさ、液状化リスクなどの項目を、住所を入力するだけで100点満点で採点してくれる。一方「地盤安心マップ」は災害リスクを地図上でチェックすることができ、その土地の過去の地図とオーバーラップさせて表示する機能もある。
土地の人気や利便性は地盤の安全性と必ずしも一致しない
「自分が買おうとしている土地がかつてどんな場所だったか、知らずに買うというのはとても危険なこと。例えば駅の近くの土地はかつて川や工場だったりと、地盤に問題のあるケースが多いのです。新たに開発・分譲される場所というのは、華やかに見えますが、今まで人が住まずに空いていた、という理由があるということも忘れないで下さい」
「地盤カルテ」には新たに相場から見た土地の価格も表示されるようになった。カルテの点数が低い土地にも関わらず高価格であるなど、流通する上での人気と地盤の評価のギャップを、一目で見ることができるようになったのだ。
「人気の立地や利便性、大手業者扱いといった市場でのブランドと、地盤の品質・安全性は必ずしも一致しない。今回の杭打ちデータ改ざん問題の一件は、不動産の見方を変える転換期になるかもしれませんね」
”買ったら後戻りできない”現状を変えていきたい。
山本氏の著書は「買ってはいけない」というタイトルだが、これは先入観にとらわれず、土地についての本質を知り、選択の範囲を広めようという意味。もし希望の土地の評価が低くても、現在は改良技術が進んでいるので、調査と工事で地盤を改良することができる。しかし、地盤調査を調査会社が行う場合、調査結果が高額な地盤の改良工事に結びつくケースが多く、その客観性が疑問視されることもある。そこで地盤ネットでは、地盤調査の結果を第三者の視点からチェックする「地盤セカンドオピニオン」を無料で提供。また、「地盤インスペクター」を養成し、改良工事の現場に派遣することで欠陥を防ぎ、品質の維持に努めている。
さらに、現状では、地盤調査は土地の購入後というのが常識となっているため、家を建てる段階で改良工事と費用負担が追加で必要になるというケースが少なくない。地盤ネットではこうした消費者の不利益を無くすために、事前の情報収集、地盤調査、改良工事の客観的な検査、さらに長期の地盤補償をセットにした「地盤安心住宅PLUS」というサービスを提供。補償は地震時の地盤液状化にも対応した、業界初のサービスとして注目を浴びている。
「自然災害による被害は地盤によって大きな差が出ますし、土地選びは生命に関わる大きな問題。たった10メートルの位置の違いで災害リスクが大きく変わる場合もあるのです。私たちは、消費者がリスクを知らないままに土地を買ってしまって後戻りできなくなるという現状を何とかしたい。そのために、私たちが提供している手段を使って、地盤について知り、考える機会をもっていただきたいですね」(山本氏)
不動産の売り手の都合で、今まで表に出ることのなかった地盤の情報と、それを知る必然性すら知らなかった消費者。地盤ネットが、地盤の品質を“見える化〟していくことで、土地の見方、選び方が変わりつつある。是非、地盤ネットのサイトから、地盤カルテや地盤安心マップを体験してみてほしい。
■LiVES(ライヴズ)
デザイン住宅、デザイナーズ・マンション、リフォーム&リノベーション、建築家など、
スタイルのある住宅を手に入れるための情報誌
隔月刊誌:奇数月15日発売 発行: 株式会社第一プログレス
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