GOETHEvol.8
Q. 少ない予算でも、良い家が建てられる……
そんな土地って本当にないの?
Text=牛丸由紀子 Photograph=柳内 悠 Illustration=モーリー☆ワイド
土地探しの難しさと旗竿敷地のおいしさ
以前から言い続けてきた土地探しの困難さ。でも実は意外な穴場があるのだ。今回は読者にそんな土地をコッソリ伝授。それが「旗竿敷地」だ。
街を歩いていると、道に面した細長い通路の先に家が建つ土地を見かけないだろうか? 竿の通路の先に、旗のような四角い敷地があるため、この名がついた敷地。大きな土地は売りやすくするために分割されるが、道路に面している部分を基準にするので、どんどん奥行きのある細長い敷地になってしまう。さらに、道路に対して土地を前と後ろで分割し、後ろの土地への専用通路を設けたのがこの形というわけだ。たくさん存在するのに、奥まっているために「日光が入りにくい」「見栄えが悪い」という理由で、手前の土地に比べ不人気。それは坪単価が手前の75%程度と、販売価格にも現れる。しかし逆に考えれば、相場より低い予算で土地を入手できるということ。もちろん売却時の金額も低くはなるが、予算重視で気に入った街に住めるメリットは大きいはず。
穴場の理由はそれだけではない。土地売買は通常「有効宅地」という考えから、家が建たない旗竿部分(専用通路)は換算されないことが多い。40坪の敷地でも、通路が10坪なら売買金額は30坪で換算されるのだ。ところが建築可能な大きさを決める建ぺい率・容積率は、旗竿部分も含めた土地の坪数で計算する。つまり、都会のような建ぺい率最大値で建てたい狭い土地ではかなり有効で、めいっぱいの広さで家を建てることができるおいしさもある。
ただし、購入時に唯一注意すべきことがある。それが旗竿部分の長さと幅。市町村によって異なるが、理想の家が建てられない場合もあるので必ず確認が必要だ。例えば幅。建築基準法では接道面が2m以上と定められているが、車を置くことを考えると2.5mは欲しい。もし2m以下だと、いくら安くても住宅は建てられないのでご注意を。
残るは不人気の理由である日光が入りにくいという難点。それを解決できるのが、設計だ。リビングを2階に配置し、吹き抜けを設け、階下に光を落とす。あるいは階をずらしながら層を作るスキップフロア構造にする。中庭の設置や壁上部に設けるハイサイドウィンドウなど、できることはたくさんある。難点こそが面白い設計のもとにもなる。
つまり、一般のお客様の頭に植えつけられているマイナスの概念を逆手に取らない手はない。知られざる魅力を持つ旗竿敷地は、実は「おいしい土地」なのだから。こんな裏は、やはり土地をよく知る設計事務所を味方にすべし。土地のマイナスをプラスに変えよう!
■GOETHE (ゲーテ)
仕事を充実させ、その哲学を人生に反映させている人間たちの
物語を凝縮した、ライフスタイルマガジン
月刊誌:毎月24日発売 発行: 幻冬舎
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