家づくりでは、土地との出会いは一期一会です。なかには、気に入った土地がたまたま傾斜地だったという人もいるでしょう。
傾斜地は、眺望に優れている土地が多いなどメリットもあるのですが、住宅の建築は法律で規制を受けることもあり、購入を検討する際は注意が必要です。
今回は、傾斜地に家を建てる場合の詳しいメリットやデメリット、土地の傾斜を活かした間取りや建築実例を紹介します。
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目次
傾斜地とはどんな土地?
傾斜地とは、その名の通り傾きのある土地のことです。通常は、傾斜の角度が30度以上ある土地のことを傾斜地と呼びます。山間の都市に多く見られ、坂道の道路の脇に家が建っているのを見かけたことのある方もいるのではないでしょうか。
「山の中の不便な田舎に多い」「家の建築に向いていなさそう」といったネガティブなイメージを持たれることもあるのですが、実は人気の居住エリアでも、傾斜地を多く持つ地域もあります。横浜市などはその代表格でしょう。平坦な土地と比較して難色を示されることもありますが、実は身近な存在なのです。
設計事務所の技術やノウハウが相応に要求される土地ですが、工夫次第で暮らしやすくおしゃれな家を建てることは十分に可能です。
傾斜地に家を建てるメリット
CASE11 眺望を楽しむ家
傾斜地は、住みやすさやおしゃれさを追求したい人にとっては、実はメリットの多い土地です。具体的に、どのような点で注目を集めているのか詳しく紹介します。
土地購入費用が抑えられる
あくまで傾向ですが、傾斜地は同じ面積の平坦な土地と比べると、価格を抑えて購入できることが多いです。平坦な土地と比べると敬遠されやすいほか、場合によっては後述のように、家を建てる際に追加工事が必要になるためです。
土地の購入費用を節約し、その分住宅にお金をかけたい人にはおすすめできます。ただし、その場合は土地の購入だけでなく追加工事の費用なども考慮し、総合的なコストの比較が必要です。
また、傾斜地や高低差のある土地は、固定資産税課税時に税額の補正を受けられることがあり、この場合は長期的な支出の軽減も期待できます。ただし、実際に課税額が減少するかどうかは土地によって状況が異なるため、確認したい場合は購入前に設計事務所に相談しましょう。
眺めが良い
傾斜地は山の麓の地域など、坂の多い高台にあたるエリアに多く存在します。そのため立地次第では眺望が期待できるというメリットがあります。
視界を遮るものがないため、ときにはタワーマンションのような景色を楽しめることも。リビングを窓の大きなデザインにすれば、山や海が見えたり、美しい夜景を日常の風景とすることもできます。
また、道路に対してリビングや居室の位置を高く設計するケースでは、眺めが良くなるだけでなく、プライバシーも確保しやすくなります。道路を行く人や車の視線も気にならなくなるため、快適に暮らせる家にできるでしょう。
日当たりや風通しが良い
傾斜地は、周囲の土地より高い位置にあることが多く、日当たりを確保しやすいという特徴があります。隣り合った土地に対して一段高い場合、光を遮るものがないため影になりにくく、採光が容易になります。日当たり重視で、家の中を明るくしたい人には大きなメリットです。
同じように、障がい物がないため風通しが良いことも見逃せません。風通しが良いと湿気が溜まらないため、将来的には住宅の寿命やカビの発生にも関わってくるポイントです。傾斜地は、隣地と屋根の高さに差があるため、空気の流れが滞りにくくなります。
凹凸のあるおしゃれな外観が作りやすい
傾斜地に建てた家は、土地の傾きを利用して、外観や内装に変化をつけやすいです。例えば、家の中にスキップフロアを設けて意図的に床の高さを変えるといった設計も比較的容易です。
外観から見ると平屋なのに、なかは2階建てのようになっているなど、遊び心のあるデザインも実現しやすくなります。床と同じく天井の高さも変化させやすいので、おしゃれなこだわりの内装にしたい人におすすめできます。
外観も同様です。土地自体に傾斜があり、フロアごとに凹凸をつけることもできます。例えば、大小のキューブを組み合わせたようなデザインは、傾斜地の家で人気です。
地下室やビルトインガレージを作れる
高低差を利用して、理想の設備を実現できることも傾斜地のメリットです。例えば、基礎を傾斜の奥(上側)を基準に高く作り、下側にビルトインガレージを備えた設計にできます。
別途屋根(カーポート)を用意しなくても、愛車を雨や砂埃から守れますし、シャッターをつければガレージのプライバシーを守ることもできます。居室とビルトインガレージを並べるように配置し、部屋から車が見えるようデザインされることも多いですね。
地下室や半地下の空間も、傾斜地なら作りやすいです。半階ずらしてスキップフロアのある内装にしたり、あえてリビングを半地下部分に配置し、上から光の差し込む構造にもできます。立体的な構造にしやすいことから設計の自由度は高く、アイデアしだいでさまざまなデザインを検討できますよ。
傾斜地に家を建てるデメリット
メリットも多い傾斜地ですが、検討するときはいくつか押さえておきたい注意点もあります。どのようなデメリットがあるのか、詳しく紹介します。
擁壁が壊れる可能性がある
購入前の時点で土地に擁壁がある場合、壊れる可能性があるかどうか、事前に確認しておきましょう。擁壁とは、盛土によって造成された土地や、がけの土が崩れるのを防止するための壁のことです。斜面にコンクリートの壁などを設けることで、土の流出・崩壊を防ぎます。
擁壁は土地の形を保つためのストッパーとして機能しているため、壊れると土地の安定性が損なわれます。上に建物が建っていると損傷を受けることがあるため注意が必要です。
古い擁壁は経年劣化によって崩壊する可能性があります。土地の購入前に「いつ作られたのか」「強度は十分か」をチェックしておきましょう。
工事費用や地盤改良費が高くなる可能性がある
敷地内の傾斜が大きい場合、土地の高低差を調整するために地面を削ったり、反対に盛土をして基礎を高くすることがあります。また、擁壁を新設したり、地盤調査・地盤改良工事が必要となるケースもあるため、相応の工事費用が発生します。
こうした傾斜の調整や擁壁の設置工事は、一般的な平面の住宅地では必要ありません。傾斜地を購入する際は、価格だけでなく、追加で必要となる工事費用も考慮し、トータルで負担する金額を評価することをおすすめします。
バリアフリー住宅にするのが難しい
土地の傾斜を生かした立体的な構造にする場合、バリアフリー住宅にすることは難しくなります。土地自体に傾斜があるため、段差や階段が多くなりやすく、スロープの設置が難しいためです。
傾斜地の土地をバリアフリーにしたいのであれば、玄関や基礎が道路の高さに並ぶよう家を建て、スロープで出入りしやすいよう工夫してみてください。
室内の上階への移動が心配であれば、家にホームエレベーターを導入することも選択肢の一つです。また、足腰に不安のある家族が1階で生活を完結できるようにするなど、間取りを工夫することで問題を解決できることもあります。
体力的な負担が大きく老後の不安を感じることがある
傾斜地は、山の近くや麓に位置していることが多いです。傾斜地に家を建てると、自宅までの道が坂道になり、体力的な負担はどうしても大きくなりがち。特に、体力や足腰の衰えが出てくる老後に不安を感じる方は多いようです。
こうした面が不安であれば、公共交通機関の利用を視野に入れて、土地を比較することも重要です。電車の駅やバスの停留所の近くを選ぶと、歩く距離が短くなるため体への負担は小さくなります。
また、希望の土地が決まっていないのであれば、近隣の平坦な土地と比較してから、家を建てる場所を決めてみてもよいでしょう。
傾斜地に駐車場を作る方法は2種類
傾斜地に造成工事をして駐車場を作る方法はいくつかあり、代表的なのは「掘り込み車庫」と「架台車庫」の2種類です。
掘り込み車庫は、道路よりも敷地を高くする際に検討できるタイプの車庫です。道路と家の間の部分にトンネルのように車庫を作ります。家の基礎と構造を共有している場合、車庫のリフォームが大がかりになりますが、車庫から家に入れるよう設計できるのがメリットです。
一方、敷地が道路より低い場合に適しているのが架台車庫です。スムーズに進入できるよう、道路と同じ高さの架台を鉄骨で作り、台に並ぶような形で家が建ちます。架台の下のスペースを活用できるというメリットがありますが、定期的に鉄骨の劣化を防ぐメンテナンスが必要です。
なお、傾斜が緩やかな土地なら、駐車場の造成工事をせずそのまま駐車することも理論上可能です。しかし、車の中でのオイルの傾きや、ボディやタイヤの一方向への負荷増大などを考えると、あまりおすすめできません。
傾斜地の家は地震や災害時のリスクが高い?傾斜地に家を建てるときの注意点
傾斜地は、立地によっては土砂災害や地震で崩壊したり、ダメージを受ける恐れがあります。そのため傾斜地に家を建てることを検討する際は、国や地方自治体が公開している情報をチェックし、安全を確認することが大切です。
では、具体的にどのようなポイントを確認しておけば良いのでしょうか。詳しく紹介します。
敷地が「急傾斜地崩壊危険区域」「土砂災害特別警戒区域」に該当しないか確認する
購入を検討している土地が「急傾斜崩壊危険地域」または「土砂災害特別警戒区域」に指定されていないか確認しておきましょう。
急傾斜地崩壊危険区域は、斜面の崩壊の危険性に応じて、都道府県知事が指定する区域です。「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律」によって、以下のように定義されています。
1,崩壊するおそれのある急傾斜地で、その崩壊により相当数の居住者その他の者に危害が生ずるおそれのあるもの
2,上記に隣接する土地のうち、急傾斜地の崩壊が助長・誘発されるおそれがないようにするため、一定の行為制限の必要がある土地の区域
急傾斜崩壊危険区域に指定されると、掘削や盛土などの工事に都道府県知事の許可が必要です。
一方の土砂災害特別警戒区域は、土砂災害の発生時に建築物が崩壊するリスクが高い土地です。家の構造に制限が設けられ、建築主事か指定検査確認機関の確認を受ける必要があります。
参考:急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律|e-GOV法令検索
どちらに該当する場合も、工期が長くなる、思い通りの間取りにできないといった可能性があります。まずは設計事務所に相談し、どのような問題があるのか、理想どおりの家づくりが可能か意見を聞いてみましょう。
造成時期を確認する
傾斜地の造成時期を確認しておくことも重要です。というのも、宅地の造成に関する法律は過去数度にわたり改正・新規基準の追加が行われているからです。古い基準で造成されている宅地は、安全性が十分に確保されていない可能性があります。
宅地造成における代表的な法改正
制定・改正法 | 制定・改正内容の概要 |
---|---|
旧宅地造成等規制法制定(1962年施行) | 梅雨前線豪雨の被害を受け制定。宅地造成の基準を定める。 |
旧宅地造成等規制法改正(2006年施行) | 兵庫県南部地震・新潟県中越地震の被害を受け改正。以下の項目を追加。 ・造成宅地防災区域の指定 宅地造成工事許可・開発許可の基準に以下を追加 ・地下水排除工の設置 ・締め固めの工法の明確化 |
宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法) (2023年施行) |
熱海市の盛土の大規模崩落を受け、旧宅地造成等規制法を抜本的に改正。 土地の用途を問わず、全国統一で危険性の高い盛土の規制を導入。 |
希望する土地が現行基準を満たしていない場合、再度造成工事が必要になる可能性があります。傾斜地の建築実績の豊富な設計事務所に相談し、事前に確認することをおすすめします。
「がけ条例」を理解しておく
建築を検討する土地にがけがある場合、地方自治体の条例により、家の位置や擁壁の設置に対して規制を受けることがあります。
東京都品川区の例だと、高さ2mを超えるがけに接する形で家を建てるときには、安全確保のために規定を守らなければなりません。家からがけまでの距離を、がけの高さの2倍以上確保する、擁壁を設置する、既存の擁壁がある場合は安全性を確認する、といった規定があります。
なお品川区では、がけや擁壁の安全確保を目的とした改修工事に対して助成金を給付する制度があります。条例の内容や補助の有無は地方自治体によって異なるため、土地の購入前に確認しておきましょう。
傾斜地での実績が豊富な設計事務所に依頼する
このように、傾斜地への家の建築には多くの規制が設けられています。希望する家の建築が可能か、工期や費用はどのくらいかかるか正確に判断するには、相応の知識と経験が必要です。
そのため、傾斜地に家を建てることを考えるのであれば、類似の土地の建築実績が豊富な設計事務所に依頼することをおすすめします。なかでも、完全自由設計の設計事務所に相談してみてください。規制や補助金について相談できるだけでなく、傾斜を生かしたデザインや空間設計の提案も受けられます。
傾斜地を活かしたおしゃれな建築実例
傾斜地に建つ家のイメージがいまひとつ湧かない、という人も多いかもしれません。そのようなときは、実際に例を見てみるのが一番です。ここでは、フリーダムの手がけた傾斜地の家の建築実例をご紹介します。
生活の中に自然と眺望が溶け込む住まい
CASE704 with a view
こちらの家は、緩やかな傾斜地に建つ2階建て。キューブ形の外観が特徴的で、内部は立体的で高さのある造りになっています。
道路側は玄関と駐車場になっていて、あえて窓も設置せずプライバシーを確保した設計です。一方で、反対方向は大きな窓とバルコニーが配置されていて、LDKから豊かな自然の風景を望めます。
傾斜地の強みを最大限に活かすと、眺望が生活に溶け込む家づくりが可能に。山と田園の景色を日常にしたこだわりの住まいです。
大きな高低差を生かしたプライバシー性の高い住まい
CASE727 ライトコートハウス
こちらの家は、傾斜地の特徴である高低差を生かした造りです。道路側は交通量が多く開口は最小限にしていますが、内部は驚くほど開放感があります。
道路と反対側に中庭が設けられていて、LDKや階段などの生活スペースが中庭に面するよう設計。中庭側の壁はほぼガラス張りになっているため、日中は照明がなくても明るく柔らかな光が差し込みます。
傾斜地ならではの立体構造を生かし、プライバシーと採光を両立させた住まいです。
立体感と奥行感のある外観デザイン
CASE627 HOUSE . GARAGE HOUSE
こちらの家は傾斜地かつ角地に建っています。大小のキューブがつながったような形状にデザインされていて、手前が屋根付きのガレージ、奥が住居です。ガレージの内部は住居とつながっているため、雨の日も濡れずに家に入れます。
内部は大開口が随所に採用されていて、外観からはイメージできないほど開放感があります。建物ごとの高低差を生かしたことにより、採光も効率的にできる設計です。立体的なデザインのしやすい傾斜地だからできる、こだわりの家づくりです。
高低差が生み出す陰影までデザインした迫力のある住まい
CASE505 silhouette
見晴らしの良い高台にたたずむこちらの家。閑静な住宅街の中で、ひときわ存在感を放っています。一見シンプルな形状ながら、外壁の質感や色に変化をつけた洗練されたデザインです。
敷地の道路側は、余裕をもって車をとめられる駐車スペース。奥の居住スペースは一段高く造られていて、リビングが通行人や車の視線に晒されないよう設計されています。
手前のグレーのキューブの内部は和室。この建物に隠れる形で中庭が設けられています。プライバシーを邪魔されない家族だけの屋外スペースです。傾斜地の立体構造を最大限に生かした住まいとなりました。
書斎から愛車が見えるこだわりのガレージハウス
CASE150 高低差を利用したガレージハウス
こちらの家は、敷地の高低差を生かし、駐車スペースを設けたガレージハウスです。1階のシャッター内はビルトインガレージとなっていて、隣接する書斎からお気に入りの愛車を観賞できるようになっています。
建物の裏には、道路から隠れる形で芝生敷きの庭とウッドデッキを配置。通行人の視線を気にすることなくくつろげるプライベートスペースです。土地の高低差を最大限活用した、こだわりの住宅となりました。
傾斜地を活かしておしゃれな家を建てよう
傾斜地への家の建築には注意が必要なポイントも多いですが、見晴らしの良さやおしゃれな家を建てやすいなど、それを補うメリットがあります。完全自由設計が可能な設計事務所であれば、傾斜地でもこだわりの詰まった家をイチから検討できます。
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この記事を書いた人
FREEDOM ARCHITECTS
長谷川 稔
1971年生まれの関西出身者。情報出版会社を経て2014年よりFREEDOM株式会社へJoin。現在プロモーション担当としてフリーダムの魅力を伝えています。