GOETHE鐘撞正也の住宅しゃべり場!番外編
ハイブリッド経営者が建築業界を変革!
真に満足できる家を建てるための新羅針盤
業界の風雲児・鐘撞正也氏が、家づくりの羅針盤となる指南書を上梓(じょうし)。舘野統括編集長が、設計と業界変革の真相を聞いた。
舘野
先日、ついに鐘撞さんの著書が完成しました。鐘撞さんは、ずいぶん若くして起業されたんですね。
鐘撞
設計事務所「フリーダム」を立ち上げたのは、24歳の時。村上龍さんが前書きに書いてくださったように、個人住宅なのに建築家がお客様の意見を取り入れず、自分の“作品”をつくる、そんな状況を変えたかったんです。
舘野
家をつくる側からすると、鐘撞さんの新著のいろいろな場面で腑(ふ)に落ちることがたくさん! ありました。生涯一度あるかないかの大きな買い物なのに、そのシステム自体に疑問を持たれたんですね。
鐘撞
例えばハウスメーカーの住宅展示場は、形があるのでお客様もイメージしやすいのですが、対応するのは営業マンですから、設計の提案はできず決められた商品を売ることに。集客コスト面でも、出展料やモデルハウスの建築・維持費はかなり高額。それで営業益を上げなくてはいけないので、自由なものではなく共通の構造や仕様のものを選ばざるを得ないのです。
舘野
施主のためではなく、ハウスメーカーにとって売りやすい家になっているんですね。
鐘撞
工務店も工事部分のみで利益を上げるのが仕事。建て主に一番近い建築家も、作品至上主義になってしまう。お客様がどういう思いで何をつくろうとしているのかが、共有できていないというのが現状なんです。
業界の常識を覆す新しい設計事務所のカタチ
舘野
これまでは建てる人のニーズが、汲み取れていなかったと。フリーダムはそんなシステムをどのように変えていったのでしょうか?
鐘撞
フリーダムでは、設計者が直接ご相談にのり、おひとりおひとりのプランを具体的に図面化します。集客コストを抑え展示場などに出展しない代わりに、インターネットサイトなどを利用してお客様が家づくりに必要な情報を揃えています。土地探しや資金計画のご相談も同時にできますし、これまでの設計事務所ではほとんどなかった完成後のサポートなどトータルで行っています。
舘野
独自のサービスも積極的に手がけてますね。
鐘撞
家づくりの参考になる画像を簡単に集められる「家チェキ」や、プロ向けには「建築知識研究所」で図面データなどを公開しています。
舘野
次々と画期的な仕組みを生みだす鐘撞さんですが、競合相手だったハウスメーカーとも手を組んだのには驚きました。
鐘撞
僕もハウスメーカーはライバルと考えていました。でも、あるハウスメーカーの工場を見せてもらったら、職人の技術がすごく高い。通常の定型化された商品だけではなく、技術的には何でもできると聞きました。ただ、ほとんどがパッケージ化されて動いているのが現状です。そこに可能性があると。もちろん企業としてのスケールメリットも大きな魅力。そこでデザインと集客はフリーダムが担い、施工会社として協力してもらうことにしたんです。
舘野
敵と組むというのは、大胆な発想ですよね。
鐘撞
いろんなプランを提案するシステムがない、集客コストがかかる、というハウスメーカーの抱える問題は、実は僕らの強みの部分。だからライバルをよきパートナーにすることが、互いの強みを活かしたビジネスになると考えたんです。
舘野
まさに革命児だ!
舘野
家づくりで一番大事にすることとは何でしょうか?
鐘撞
フリーダムの間取りがひとつとして同じものがないように、それはお客様それぞれ異なると思います。でもつくる側からすると、完成後に施様が友人などに「この家、フリーダムで建てたんだ」ではなく「この家、俺が考えたんだ」と言っていただけたら、目的は達成したと感じますね。お仕着せではなく自分が考えた家という感覚こそ、お客様が家づくりの主体になった証拠。これからも、そう思っていただける家づくりを続けていくつもりです。
■GOETHE (ゲーテ)
仕事を充実させ、その哲学を人生に反映させている人間たちの
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