LiVES2015年10月号
フリーダムと地盤ネット
設計と地盤のプロが、不動産の価値観を変える。
今までの不動産の価値判断から抜け落ちていた「地盤の安全性」という視点。今回、フリーダムと地盤ネットが手を組み、安全で価値のある土地選びと家づくりを実現するために動き出している。従来の価値観を変える新しい不動産のあり方について、両社の代表取締役であるフリーダムアーキ
テクツデザインの鐘撞正也氏と地盤ネットの山本強氏が語った。
LiVES
フリーダムと地盤ネット。今回、設計と地盤のプロフェッショナル同士の業務協力となった訳ですが、そのきっかけとなったのは何だったのでしょう?
鐘撞
「家づくりの現場では、土地を購入して『さあ、家を建てよう』となってから地盤の問題が見つかるケースが少なくないのです。たとえば地盤が軟弱で、杭を打って強化する改良工事が必要となったら、想定外のコストがかかってしまう」
山本
「不動産というのは特殊なもので、駅から近いといったような立地条件とその下の地盤の良し悪しが一致していないのです。だから、人気の高い土地でも、その下の地盤がしっかりしているとは限らない。自動車なら人気ブランドは性能も担保されますが、不動産にはそれがない。土地を売った後は、地盤に不備があっても誰も責任を負わないのです」
鐘撞
「地盤のリスクを回避するために、フリーダムでは以前から大手の調査会社に地盤調査を依頼していましたが、判定結果が費用のかかる地盤改良工事に結びつく場合が多く、客観性に欠けるのでは?という疑問がありました。その点、地盤ネットは改良工事を一切請け負わないというスタンスを貫いていて、消費者向けにさまざまな地盤情報を無料で公開しています」
山本
「自然災害による被害は地盤によって大きな差が出ますし、土地選びは生命に関わる大きな問題です。私たちはリスクを知らないまま、『買ったら後戻りできない』という消費者の不利益を解消するため、調べたい地点の浸水リスク、揺れやすさ、液状化リスクなどの5項目を100点満点で採点する『地盤カルテ』や『地盤安心マップ』といったサービスを公開しています。『地盤カルテ』は、地盤も含めた不動産の見方を広く知ってもらおうと、1月から無料公開に踏み切りました」
鐘撞
「フリーダムにも不動産流通事業部がありますが、これはあくまでお客様に満足できる不動産を紹介するもの。目的はその先の設計にあり、土地で利益を追求するものではありません。不動産に対する客観性をもって、お客様の不利益を解消する、という点で、私たちには大きな共通点がある。これが今回の業務協力につながったのです」
マップとカルテで良い土地の概念が変わる
LiVES
「地盤ネット」のサービスを使うことで何が変わりますか?
山本
「『地盤安心マップ』を見ていただければ、不動産としての人気と地盤の良さが必ずしも一致しないということが、簡単にお分かりいただけると思います。たとえば駅の近くの新しい分譲地などは人気がありますが、川だった場所を埋立ててできたというようなケースも多く、地盤が弱い確率は高くなる。反対に、もとから人が住んでいて古い町並みがあるような場所ほどカルテで高い点数が付いたりと、人気と安全性が相反する傾向があります。『地盤安心マップ』では、過去の地図を併せて見ることができるので、希望の土地がどんな場所だったのか、参考にしていただきたいですね。また、仮に希望の土地の評価が低くても、現在は改良技術が進んでいるので、適切な調査と工事で改良することができます。どんな地盤に、どんな工事で建てるかを一緒に考えることで、カルテで低い点数の地盤でも80点に近い安全性を生み出すことができます。建物同様〝地盤もデザインする〟ことが可能なのです」
LiVES
今回の業務協力に何を期待していますか?
山本
「自然災害が増えている今、不動産の価値は『地盤』抜きでは計れません。フリーダムとの協力で、今までの『土地+建物』に地盤を加えた『地盤+土地+建物』(図1)の発想が常識となるように、業界を変えていきたいですね」
鐘撞
「フリーダムでは、設計士の視点から固定概念にとらわれない不動産選びを提案してきましたが、地盤ネットとの業務協力で、今まで目に見えなかった地盤の安心感も提供できます。情報格差をなくし、透明性をあげることで、お客様の家づくり、土地選びが、もっと自由になることを期待しています」
text_Jun Manabe photograph_Kaori Nishida
■LiVES(ライヴズ)
デザイン住宅、デザイナーズ・マンション、リフォーム&リノベーション、建築家など、
スタイルのある住宅を手に入れるための情報誌
隔月刊誌:奇数月15日発売 発行: 株式会社第一プログレス
http://www.livesjapan.com/