ENGINE2015年2月号
愛車と自然が同化する家
FREEDOMが教える
自分だけの“ガレージハウス”のつくり方
クライアントの要望に応える〝オーダー・メイド〞の家づくりで話題のフリーダムアーキテクツデザイン。ガレージハウスづくりにも定評のある彼らが新たに着手したのは、愛車のポルシェと海に沈む夕陽をリビングから愛でることのできるスタイリッシュな別荘だった。
ライフスタイルにあわせた家づくりを…。そんな標語を掲げるハウス・メーカーが乱立する時代になったが、言うは易く行うは難し。一口にライフスタイルといっても、実際のところは家族の数だけあるわけだ。それぞれの要望に見合った住まいともなると、施主と一対一で向き合える誠意ある作り手が必要となる。 そんな理想の設計事務所が、フリーダムアーキテクツデザインだ(以下FREEDOM)。彼らがつくる間取りには、ひとつとして規格化されたものがない。建築士が直接、依頼主から要望を聞き、何度も話し合いを重ねながら理想の住まいをつくりあげていくからだ。ましてやクルマ好きを満足させるガレージハウスとなると、建築士にもそれ相応の知識や情熱が要る。以前、本誌で紹介した“フェラーリを眺める家”(大阪府堺市)の建築士で、FREEDOM、大阪・梅田事務所の小室芳樹氏に、彼が手掛けている最新のガレージハウスについて話を聞いた。
キャンプ感覚の別荘
今回のクライアントは、大阪市内に住むアウトドア派のご夫婦。海に面した約460㎡の更地を和歌山県内に所有しており、時折、自宅から1時間ほどドライブしては、ここでバーベキューやキャンプなどを楽しんでいるという。小室氏に解説してもらった。 「この土地に、海に沈んでいく夕陽、そして2台の愛車(赤のボクスターと白のポルシェ964)をリビングから眺めることのできる別荘を建ててほしいという要望をいただきました。ご主人とは現地までクルマで一緒に行き、道中で住まいに関する意見交換を随分としましたね」 その土地は道路から3mほど低い場所にあったので、小室氏は人工地盤をつくり、そこから平屋の建物を柱で支えて、道路の高さにあわせる計画にした。いわゆるピロティの構造で、建物の真下が屋根つきの外部空間になるので、ここでバーベキューなども楽しめるというわけだ。 リビングの西側(図面の下部分)が海なので、そこに大開口の窓、隣の浴室にも西向きの窓を設けた。ガレージは、ガラス一枚で仕切ってリビングから見えるように。ソファでくつろぎながら、海と愛車を同時に愛でることができる、贅沢なレイアウトに仕上げた。
「約85㎡の住居空間には、6帖ほどの洋間はつくりますが、寝室は特に設けません。海やクルマと一体感を感じながら、リビングに布団を敷いてごろっと眠れる、そんなキャンプ感覚で泊まれる別荘を考えたんです」(小室氏) 一方でクライアントはデザインにこだわりのある方で、たとえばピニンファリーナのミトスの模型などが似合う、スタイリッシュな住居を望まれたという。それに対する小室氏の答えが、右ページ下の外観図。ランボルギーニ・ガヤルドやアヴェンタドールを彷彿とさせる、折り紙のような幾何学的な形状だ。 自分のライフスタイルにあわせた住まいづくりは簡単ではない。だが適切なプロのパートナーを選ぶことが、一番の近道であることだけは間違いないようだ。
■ENGINE(エンジン)
「エンジン、それは前に進む力」を合い言葉に21世紀のあらゆる
根本問題に意欲的に取り組む、男の新しいライフスタイル誌
月刊誌:毎月26日発売
発行:新潮社
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