GOETHEvol.1
Q. 都会に家を持つなら、一軒家?
それとも新築マンション?
Text=牛丸由紀子 Photograph=星 武志 Illustration=モーリー☆ワイド
住宅を買う、建てる、売る……。
それは一生に1度の大勝負。年間2000プランの間取りを作成している建築設計事務所を率いる僕だから言える、住宅のいろんな疑問に対する答えや裏話をこれから思いっきり喋っていきますよ。 第1回目は最近話題の「都会の〝狭小〞住宅」。土地の高い中心部で、利便性を求めればおのずと広さは限られる。驚くような小さい場所に、一生分の高いお金をかけてまで一軒家を持つ価値がある? それより、美しい共用スペースや高いセキュリティのマンションのほうがいいのでは?と思うもの。そもそも一軒家志向は、男の甲斐性や所有欲、子供のためと、価値観は多種多様。だから誰もが気になる〝お金〞の面で「一軒家vsマンション」を比較してみよう。 購入者は『世帯年収1000万円』のサラリーマン。希望地は、実際の要望も多い『渋谷区広尾』。一軒家については、建ぺい率、車庫、斜線規制などを考え、居住スペースが22坪(約72㎡)となるように計算。銀行借入は、『年収×6倍+残金は頭金』として、シミュレーションしてみると……。 イニシャルコストは、ほぼ互角の勝負という結果が(下のイラスト)。
じゃあ、ランニングコストは?
一軒家は20年間に修繕費用(主に外壁)約300万円が必要になるのに対し、マンションは修繕積立費用が約480万円(2万円/月×20年)と、少々高くなる可能性がある。ところが、大きな違いは売却の時。新築マンションの15年後の下落率は約30%。6800万円で購入した物件が4760万円に。20年後となれば約40%下がり、4080万円の価値しかなくなってしまう。対して一軒家の場合。まず建物にはまったく値はつかないと思っておこう。土地購入では、たいてい建物は解体されてしまう。しかし、こちらの強みは土地自体の下落がほとんどないこと。それは15年後も20年後でも同じ。そのまま4950万円の価値を認められるのだ。 そう、もし〝資産価値〞だけならその軍配は一軒家に上がることになる。でもそこには人間の生活がある、というのが僕の考え。だって10年後を想定して家をつくっても、2年で離婚! なんて不幸な話も実際にある(笑)。夢溢あふれる家づくりも、微妙な夫婦仲を改善する〝かすがい〞にはならない。 つまり、あなたがこの先10年、20年の未来を描けるのなら、まず土地はよい場所で探すべし。そして、売却時に一文の価値にもならない建物は、〝売れそうな間取り〞なんかで満足せず、自分が住みたい間取りをとことん追求すべし。 それなら僕の家はって? 実はマンション、それも中古なのだ(笑)。さて、その選択の理由とは? 次回に乞うご期待!
■GOETHE (ゲーテ)
仕事を充実させ、その哲学を人生に反映させている人間たちの
物語を凝縮した、ライフスタイルマガジン
月刊誌:毎月24日発売 発行: 幻冬舎
http://www.gentosha.co.jp/goethe/