ENGINE編集長 特別対談
“要望通り”であることが、提案のゴールではない。
ENGINE編集長
村上 政氏
“ライフスタイル商品”に関わる魅力
鐘撞:車と住宅は人それぞれにこだわりが強く出てくるもので、共通点が多いですね。
村上:ファッションも同じ仲間だと思いますが、いずれも“ライフスタイル商品”といわれるものですね。共通するのは、使って楽しむものだということ。車は運転してどこかに行く、ファッションもそれを着て出かける、家はそこを舞台にして時間を過ごす。いずれも実際に使ってはじめてその良さが分かってくるものですね。
鐘撞:『ENGINE』の読者も、車のある暮らしを積極的に楽しむ人が多いのでしょうね。
村上:ポジティブ志向の人が多いですね。自分の人生をどうやって楽しもうかと常に考えている。運転に対しても意欲的です。『ENGINE』では、ずっと「ドライビングレッスン」を開いていますが、たとえばポルシェを買った人が、それを乗りこなすために運転技術のスキルアップを図りたいと来てくれます。
鐘撞:車が好きな人は家づくりにも積極的に参加することが多いですね。自分のスタイルを持っているのだと思います。
一歩先を提案し、一緒に実現する
鐘撞:フリーダムは基本コンセプトとして、お客さまのライフスタイルに合わせて住宅をつくるということを考えています。ただ、それは難しいことではないんですね。きちんと要望を聞き、それを形にしていけばいい。実は、お客さまの現状のライフスタイルをそのまま形にしてしまうと、本当に望まれているものに届かない可能性があるんです。最近思うのは、ワンランク上のライフスタイルや世界観を形にして提案することによって、お客さま自身がそれまで気付かなかったものを実現する。それがお客さまの自己成長にもつながる、ということなんです。
村上:それは車に対してもいえますね。『ENGINE』では毎年「2台持ち」という企画をやっています。最初の車選びは、家族もいるからと、実用性を考えたフォードアセダンやステーションワゴンなどになる。でもだんだん車のことを知るようになって、軽量のスポーツカーがほしいなと思ったりします。1台では満足できなくなってくるんです。でも実用的ではないし維持費もかかると悩む。そういう時に『ENGINE』が、2台持てばばいいじゃないですかと背中を押す、私たちにはそういう役割があると思っています。
鐘撞:やってみよう、というきっかけになりますね。
村上:「人生をどう楽しむか」というのが、コアなところにある『ENGINE』のテーマだと思っています。その楽しみ方としてどういう提案ができるか。お金もかかるかもしれないけれど、お金をかけないでやる方法もある。「身の丈に合わせた」という言い方があるけれど、本当はそれよりちょっと上くらいを目指していくというのが楽しいことだと思っています。さっき鐘撞さんが「ワンランク上の提案」とおっしゃっていたけれど、その通りだと思いますね。
鐘撞:私は今、ヨーロッパ車に乗っているんですが、年齢からいえば、少しランクが上の車かもしれません。でも、気持ちがいいですよね。こういう車に乗れる自分になりたいと思ってがんばってきた。それが手に入った、ということですからね。住宅でも、ただ分相応であったらおもしろみがないと思います。少し頑張ったところがあれば、毎日家に帰って、ここはがんばったんだと思える。それは自信にもなります。
村上:ライフスタイル商品とはそういうものなんでしょうね。洋服だったら、ちょっと人にも見せたくなるようなものでなければだめだと思う。ましてや住宅は高価なものです。自分の好みをうまく反映させてくれるだけでなく、あなたにはこれが似合いますよという提案があって、それが実現したら嬉しい。
鐘撞:今後フリーダムに期待されることがあれば、ぜひおっしゃってください。
村上:注文する側は、夢はあっても家に対してはしろうとです。たとえば、リビングから愛車が見えるようなインナーガレージがほしいと思ったりする。しかし、その夢と実際の暮らしがうまく結びつかない。夢を現実に定着するためには、実はこうした方がいいんですよというプロの提案をしてほしいですね。
鐘撞:フリーダムは設計者が家づくりのスタートから最後まで関わるという新たなスタイルを貫いています。また、そこが評価をいただいているところでもあります。互いに切磋琢磨しながら設計のスキルをさらに高めて、魅力ある設計者集団になっていきたいと思います。またいろいろご教示ください。今日はありがとうございました。
■ENGINE(エンジン)
「エンジン、それは前に進む力」を合い言葉に21世紀のあらゆる
根本問題に意欲的に取り組む、男の新しいライフスタイル誌
月刊誌:毎月26日発売
発行:新潮社
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