Garage Life特別対談
価値を認め合う時代のガレージと住まい。
Garage Life編集長
石原 淳氏
人それぞれに “スーパーカー”がある
鐘撞:『ガレージハウス』は、いわゆるスーパーカーのガレージが主に取り上げられていると思っている人もいるけれど、実は違いますね。
石原:違うんです。“その人のライフスタイルの器を見せてもらう”ということをテーマにしていて、ガレージを舞台にどういうライフスタイルを楽しんでいるのかを取材させてもらっています。もちろん、スーパーカーのガレージも登場しますが、1冊20件くらいのうちの4件ぐらいですね。お金を掛けなくても、その人の“筋”が一本通っていたり、工夫があったりすれば取材をお願いしています。
鐘撞:そもそも以前のような、スーパーカーを頂点にピラミッド型をした車のヒエラルキーは崩れていますよね。自分のライフスタイルを表す車が一番いい車であって、だから、人によって頂点は違う。スーパーカーもあるけれど、ミニクーパーもあるしクラシックカーもある。ライフスタイルに応じて価値の頂点がいろいろある面白い時代だと思います。
石原:今はみんながそれぞれの価値を認め合っていますね。
自分にとって価値があればそれで満足
鐘撞:取材していて、ライフスタイルの変化って感じますか。
石原:ガレージという器だけでなく、それにプラスアルファして、もっと自分なりに楽しみたいという人が増えました。たとえばリフトを入れたり。
鐘撞:リフト?
石原:そうです。車を上げて2階のリビングから眺める。
石原:自分のスタイルへのこだわりが強いんだと思います。人と同じではない。自分はこうするんだという意志を貫く。読者の読み方もそうです。ガレージのつくり方だけではなくて、その人のライフスタイルに注目している。自分と同じ趣味の人がどんなものを持っていて、何を読んでいるのか。写真に写っている棚の一つひとつまで見ていますね。
鐘撞:ライフスタイルへの共感があるから細部まで見てみたいし、より感銘するんでしょうね。
石原:自分のスタイルへのこだわりの強さにも関係すると思いますが、「見て、見て」という感じではないんですね。むしろ外からは分からないようにしたい。自分の親しい人には見せたいけれど、一般の人やご近所の人には知られたくない、という人が増えました。
鐘撞:住宅もその傾向はあります。外はシンプルな壁。でも一歩中にはいると、中庭にきれいな光が差し込んでいたり、大きな吹き抜け空間があったり。先ほどの、スーパーカーだけが頂点の時代ではないという話にもつながるけれど、家も昔は権威や成功の象徴だった。しかし今は違う。外から見て「どうだ!」というふうにはしませんね。自分にとって美しいもの、楽しいもの、価値あるものであればそれでいい。
価値観を同じくする人と一緒につくりたい
鐘撞:住宅の設計でもっと頑張ってほしいというリクエストがあれば、ぜひ聞かせてください。
石原:次を見据えた提案をどんどんしてほしいと思います。たとえば自動車は今後EV(電気自動車)にシフトしていくでしょう。排気ガスがなくなれば、ガレージのあり方も大きく変わると思います。
鐘撞:車がもっと家の中に入っていけますね。住宅は新築すれば30年40年と住んでいけるものだから、確かに今から考えておくべきことは多いと思う。
石原:ガレージの素材も、たとえば全面ガラス張りというのもあるんじゃないですか。面白いもの、ユニークなものが見たいですね。
鐘撞:今年の2月から「Carくらす」というFace Bookを運営しています。私たちが設計したガレージを紹介するだけではなくて、こんなガレージがある、という投稿もいただきながら、ガレージや車を楽しむ暮らしをテーマにしたコミュニティをつくっているんです。そこからもガレージへの要望や家づくりのヒントが得られると思っています。
石原:取材に行くと、最初はハウスメーカーに相談していたけれど、思いが伝わらなかったという人が多いですね。
鐘撞:ハウスメーカーは、あらかじめ商品として家ができてしまっていますからね。それに、雑貨でも服でも、いろいろある中から選ぶことができて、そこに自分らしさがあるのに、でも家はハウスメーカーで、というのはかっこわるいじゃないですか。
石原:自分の価値観を理解してくれる人や同じ価値観をもった人と一緒に家づくりをしたい、という人は増えています。フリーダムはそういう声に応えられる事務所だと思います。
鐘撞:ありがとうございます。これからも頑張ります。
■Garage Life
クルマをより楽しむための趣味空間=“ガレージ”にスポットを当てた、
日本で唯一!趣味のガレージ専門誌
季刊誌:3,6,9,12月1日発売
発行:ネコ・パブリッシング
http://www.garagelife.jp/