住まいの設計編集長 特別対談
身の丈に合った自分らしい家づくりを応援する。
住まいの設計編集長
鈴木 康之氏
最初に手にとって役立つ1冊に
鐘撞:『住まいの設計』は歴史が長いですね。
鈴木:創刊が昭和35年ですから、今年で54年になります。創刊号で扇千景さんと中村扇雀さんご夫妻の住まい、創刊2号で王貞治さんの住まいなどを紹介しています。まだテレビのある家が珍しかった頃で、創刊当時の誌面を見ていると歴史を感じますね。でも、昔も今も一貫して目指しているのは、家を建てたいと思った人が、最初に手に取って、そして役立てていただける雑誌であることなんです。
鐘撞:いつも間取りが丁寧に紹介されているし、建築費用のこともわかる。住宅ローンなどを含めて、家づくり全般について紹介されていますよね。
鈴木:住まいには“建て時”があると思うんです。結婚して数年経った頃とか、子どもが小学校に上がる前とか。年齢でいうと30代から40歳前半というところでしょうか。その“建て時”に手にとってほしい。住宅誌は、結婚情報誌と一緒だという気がします。「結婚しよう」ということになって初めて式場のことを勉強するわけですね。家づくりも同じで「家を建てよう」と思って、初めていろいろなことを考える。そうすると“いくらかかるんだろう?”とか“どういう間取りがいいんだろう?”とか“どのくらいの期間で建つんだろう”と、あらゆることが疑問として出てきますよね。日頃気にしていないだけに、すべて新しく調べたり考えたりしなければならない。そういう時に役立ててもらえれば、と思っています。
ワンストップサービスを提供したい
鐘撞:おっしゃるように家づくりは、いろいろな要素があります。フリーダムは設計事務所ですが、家づくりについて「ワンストップサービス」が提供できるようになりたいと考えてきました。普通、建築家に頼むと、デザインはしてくれても、土地探しや資金計画、ローンのこと、住み始めてからのメンテナンスのことなどは、まず相談できません。しかし、それでは満足できる家づくりにならないと思うんです。建築家の目で見れば、価格が安くて魅力的な土地があるし、資金計画しだいで予算も少し増やせるかもしれない。メンテナンスも設計したところにずっと頼めたら安心です。家を建ててそこに住む人のことを考えたら「ワンストップサービス」は当たり前ですよね。でも、建築家や設計事務所は自分の都合優先で、そういうことをしてこなかった。
鈴木:確かにフリーダムさんは今までの設計事務所のスタイルとは違うもの構想されて、それをしっかりと軌道に乗せられたと思いますね。
「建築家との家づくり」の敷居を低く
鐘撞:最近の住宅の傾向のようなものはありますか?
鈴木:創刊当時は一戸建の家を構えることは憧れであり、人生のひとつの到達点だという感じでした。しかし、20年前くらいから建築家の提案が一般の人にも受け入れられはじめ、建築家に頼んで自分らしい家を建てようという人が非常に多くなりましたね。
鐘撞:フリーダムの出発点も「建築家との家づくりの敷居を低くしたい」というところにありました。今も一貫して目指していることです。かなり体制は整ってきたと思っています。
鈴木:フリーダムさんが建てた家を、ここ何年も拝見していますが、身の丈で、自然体で、そしてどうしても実現したいことがある、という人が安心して任せられる事務所だと思いますね。実際、大きな支持が集まって、事務所も全国に増えていらっしゃる。
鐘撞:ありがとうございます。まだまだやらなければならないことは多いけれど、この方向だということははっきり見えています。ただ、事務所が増えて規模が大きくなると“フリーダムらしさ”が分散する可能性があると思うんです。そこで今進めているのが、社内に設計のシンクタンクをつくること。これまでの私たちの設計案は、提案も含めれば2000件近いものがあって、今も日々増え続けています。これをデータベース化して、社内の設計者の共有財産にしたいと思っています。設計で迷った時には、ここにアクセスしてヒントを得ていくことができる。今以上に設計しやすい環境をつくっていきたいと思います。さらにそれをweb上で公開して、住宅の設計に携わる人みんなに使ってもらうことも考えているんです。
鈴木:それはいいですね。そうやって建築家と進める家づくりの裾野がもっと広がっていけばいいと思う。フリーダムさんはこれからも“自分たちらしい家づくりを”と、考える人の背中を押し続けてくれる会社であってほしいと思います。
鐘撞:ありがとうございます。一つひとつ着実に進めていきたいと思っています。
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