インタビュー
都内にある閑静な住宅街。アプローチを抜けると、タイムスリップをしたようなレトロな佇まいの住まいが迎えてくれた。 今回は、庭と調和した古民家風住まいに建替えをされたYさんの家づくりエピソードをご紹介します。
「家づくりのきっかけはいくつかあるのですが、一番始めは家族の介護部屋が必要になり増築を検討したことです。しかし接道幅が足りておらず再建築不可物件だったため、増築をすると違法建築になってしまう。 その時に丁度、隣地から土地の一部を購入することができ、検討を進められる状態になったんです。」
もともと、接道が2m以下の再建築不可物件を購入し住まわれていたYさん。 購入当時から火事等で再建築が必要になった時に備え、隣地が相続や売却が出たタイミングで、一部を購入することは視野に入れておられたそうです。
「再建築できる状態になってから、まず検討したのは古民家の移築でしたが、新築するよりもコストが割高ということが分かりました。 金利も低く融資の受けやすいタイミングであったことも後押しになり、新築でやりたい事を叶えようと建替えを決断しました。」
紆余曲折を経て新築を決断されたYさん。依頼先のご検討でもこだわりがあったようです。
「設計者を上手く使って、やりたい事を叶えたいと思っていました。でも設計者と知り合う機会はなかなか無いですよね。 そこで、WEBで検索をして、いくつかの住宅会社を見比べました。その中で、リーズナブルに全てのわがままを叶えられるのはフリーダムさんしかないと思ったんです。」
設計者の作品ではなく、ありきたりなパッケージ化された家でもない。コストを抑えて自由な家づくりを出来る点に魅力を感じ、家づくりを託してくださいました。
「家づくりのテーマは、庭との境界線を無くすこと。 建替え前は、庭と家が完全に分離されていたので、調和する家にしたいと思っていました。間取り決めでは、以前の家の反省点も活かしています。 例えば、北から南に風が抜けるように開口を設けた点や、大きな庇を設けたのもそうです。」
以前の家は、庇のないモダンな造り。雨が降った時に窓を開けられないことや、日差しが直接差し込み家具が焼けてしまうなど、日本の風土に適していないと感じられていたそうです。
「間取り決めで担当者さんと一番始めに議論したのが、“一番身近なところを起点に色々なサイズを考えましょう”ということでした。 例えば、LDKの広さを決める時には始めに、生活の根本にある食事の時に使うお盆の幅と椅子の高さから、ダイニングテーブルの大きさを決めました。そのうえで、既存家具をレイアウトし広さを考えていきました。」
家族の人数に合わせてLDKの広さを決めていくという考え方ではなく、その空間でどんな生活をするのかという視点で間取りを考えられたYさん。 間取りだけでなく、部分的な補修のしやすい珪藻土の塗り壁や熱い鍋を置いても傷まないタイルをカウンターの天板に採用されるなど、生活やメンテナンスのしやすさまで考慮しながら内装材を決められたそうです。
住宅設備のほとんどはYさんがご自身で探してこられ、購入したものを担当設計者に渡しながら、家づくりが進行。その中で何ができるのかを考えて欲しいという形で設計者に相談し、設計者をうまく活用しながら家づくりをされていたご様子が伺えました。「家を建てるために何かを調べたということはなかったですね。」と話しながらも、古民家風にしようと思われたきっかけを教えてくださいました。
「実は旅行に行って、完全に満足したことがないんです。写真を見て素敵だなと感じた古民家風の旅館に行っても、いつも裏切られる。 それであれば、“自分でイメージ通りの家を造ればいいんじゃないの?”と思ったのが、古民家風をコンセプトにしたきっかけですね。コンセプトに合わせて、ネットで蔵戸やガレージの門扉、照明器具を購入して取り付けてもらいました。」
外観に大きなインパクトを与えている蔵戸や門扉。Yさん邸は準防火地域のため、延焼ラインにかかる部分は外観に燃える素材を使用できません。 そこで、延焼ラインにかかるガレージ内部の壁にサイディングを使用し外構とすることで、取り付け可能にしています。
「内部は、閉めた際に1枚に見えるデザインの吉村障子を取り入れました。リビングと土間も障子で仕切れるようになっています。 障子を閉めて土間の照明をつけると、障子越しのほのかな明かりが良いんですよ。飾り柱は、空間にメリハリが出したくて取り入れました。」
外枠も中枠も同じ寸法で作られているのが特徴の吉村障子。閉めていても、そのスッキリとした見た目と、障子越しに見えるシルエットや明かりが幻想的な雰囲気を創出し、Yさん邸をより趣のある住まいにしてくれている一品です。
「ガレージは、レンガ調のブリティッシュテイストにしています。イギリス家具もそうですが、ブリティッシュテイストは直線が多く色味も和のテイストとの相性がいいんですよ。 バイクや自転車を組み立てるのが好きで、完成時は箱だけの状態にしてもらいました。棚や照明を増やして、使いやすいようにアレンジするのを楽しんでいます。」
和テイストの居住空間と、ブリティッシュテイストのガレージ。この二つの空間を土間が繋ぎ、自然と調和しあう内部空間に仕上がっています。
「この土間は、担当者さんが提案してくれました。当初は、間取り的に廊下ができるのであれば、畳の廊下にしてみようかなど考えていたのですが、土間にするのが一番しっくりくると感じたので採用したんです。 他にも、リビングの家具裏にあるスイッチの位置が、家具よりも上に付けてあり、“よくここに付けてくれた!!”と感心しましたね。」
今まで築かれてきた生活スタイルや経験をもとに、好みのテイストをご自身で新たに造り上げていかれたYさん。そのこだわりは、見える部分だけではないそうです。
「この家は、最新の減震機能を取り入れた住宅にしてあります。私は自転車やバイクが好きなのですが、それらの乗り心地が良く安心できるのは、フレームがしっかりしていてサスペンションで衝撃を逃がすタイプだからです。家の構造でも同じようにしたいと思い、取り入れました。」
減震機能とは、土台と基礎の間に挟む基礎パッキンの替わりに減震用のパッキンを設置して、地震のエネルギーを摩擦による熱エネルギーに変換し、建物の揺れを軽減する装置のことです。 自転車についてはご自身で組み立ててしまうほど傾倒しているようですが、その中からの発想で、住宅の安全性にも目を付けられたそうです。デザインにこだわるだけでなく、安心して暮らせる家づくりという視点もしっかりと押さえておられました。
「自宅が完成してからは、外出することが減りました。旅館で満足できなかったことを、自宅で叶えられたので旅行も行かなくなりましたね。思った通りの住まい方が出来ています。 蔵戸や門扉、窓も全てに網戸を付けているのですが、風通しが良いので夏場は開けっ放しにしてエアコンいらずの生活です。冬場は、リビングの障子を閉めきってペレットストーブを付けると、とても暖かいです。」
ご自身の好みをとことん追求したからこそ、ご自宅でのひとときが一番と感じられるほどの居心地を叶えられたご様子でした。最後に、お気に入りの過ごし方を伺いました。
「夜にライトアップした家を庭から見ている時と、自分で家に手を加えている時です。まだ完成しているとは思っていなくて、家は補修が必要ですし、手を加えるごとに愛着が増していきますね。」
季節の移り変わりを知らせる庭や風、光。住まうごとに、過ごした時を積み重ねていきます。
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この記事を書いた人
FREEDOM ARCHITECTS
長谷川 稔
1971年生まれの関西出身者。情報出版会社を経て2014年よりFREEDOM株式会社へJoin。現在プロモーション担当としてフリーダムの魅力を伝えています。