CASE433 奏の家
コの字型の平屋は、中庭も憧れる人などから人気の高い間取りです。ただ、建物がやや複雑な形状になり、コストや機能面での不便を感じる可能性があります。
本記事では、コの字型の平屋のメリット・デメリットや建築時の注意点などについて詳しく解説します。コの字型の平屋の建築実例や間取り例も紹介しますので、自分の希望を満たす住宅を設計するためにぜひお役立てください。
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目次
コの字型の平屋とは?
CASE683 丘の上のハウス
コの字型の平屋とは、建物の三方が壁に囲まれ、一方だけが外に面している間取りの住宅です。住宅を上から見た時に「コの字」のような形状になっており、凹んだ部分は中庭やガレージなどさまざまな使い方ができます。
また、すべての面が壁に囲まれているわけではないため、外部から明かりや風を取り入れやすく、開放感がある点も特徴です。
コの字型の他にも!平屋の形の種類
CASE515 WALL
平屋の形状には、コの字型以外にもいくつかの種類があります。ここでは、平屋の形ごとの特徴を紹介します。
正方形
正方形の平屋は、シンプルでスタイリッシュな外観が特徴です。建物の凹凸がない分コストを抑えられるため、費用対効果を優先したい場合に向いています。また、バランスの安定した正方形の住宅は複雑な形状に比べて耐久性を得られやすい点もメリットです。コンパクトな生活動線を確保できますが、中央部に窓を設けることが難しく、閉塞感が出る可能性があります。
I字型
I字型の平屋は、縦または横に長いタイプの平屋です。間取りの自由度が高く、理想とする住まいを設計しやすい傾向があります。また、東西に長い住宅なら、十分な日当たりを確保できます。
建物の隣に大きな庭を設けて、どの部屋からも庭へ行き来できるような間取りも可能です。正方形同様に建物の形がシンプルで、コストを抑えやすい傾向があります。
L字型
L字型の平屋は、二方向の壁に中庭が囲まれている間取りです。オープンでありながら適度にプライバシーを保てます。また、どの部屋でも採光や風通しを確保しやすい点も特徴です。
L字の縦と横でスペースを区切れるため、一方はLDK、もう一方は寝室と個室といった分け方もしやすいでしょう。
ロの字型
ロの字型の平屋は、四方向を壁に囲まれた建物の真ん中に中庭を設けており、上から見た時に「ロの字」に見えるタイプの住宅です。中庭は外部からの視線が遮断されており、完全にプライベートな空間を構築できます。
ただし、壁が多い分、一般的な平屋に比べて建築費が高くなる可能性があります。
コの字型の平屋を建てるメリット
ここでは、コの字型の平屋で期待できる主なメリットを紹介します。
採光や風通しを確保しやすい
コの字型の平屋のメリットとして、採光や風通しを確保しやすい点が挙げられます。正方形の平屋だと、中央部分の部屋には窓を作れないため室内が暗くなりがちです。一方、コの字型であれば各部屋に窓を設けられるため、自然光を十分に取り込むことができ、家の中心部まで明るく開放的な空間を作れるでしょう。
また、コの字型の外部に面した一面から風が抜けやすく、爽やかな風を感じながら過ごせます。常に空気の入れ替えができるため、カビの防止にもつながります。
ただし、凹んだ部分をどちらの向きにするかよく検討することが大切です。西日や近隣の影響なども考慮した上で設計する必要があります。
プライバシーが確保された中庭が作れる
コの字型の住宅は、三方向が壁に囲まれているため、周囲からの視線を気にすることなく屋外での時間を楽しめます。洗濯物や布団を干す、ガーデニングや家庭菜園を満喫する、読書や日光浴など思い思いに活用できます。
また、椅子やテーブルを置いて、バーベキューやガーデンパーティを行うことも可能です。フェンスや塀などの目隠しを設置すればプライバシーと安全性を確保できるため、子どもやペットの遊び場としても安心して使えるでしょう。
このように、コの字型の平屋ではライフスタイルに合わせた使い方ができる中庭が手に入ります。
中庭部分をガレージにできる
一辺が外部とつながっているコの字型の中庭は、駐車スペースとしても活用できます。中庭の横幅が約3m〜3.5m以上であれば、一般的な自家用車を駐車可能です。子どもが大きくなった後の駐車スペースの拡大や、来客時の対応にも柔軟に対応できるでしょう。
また、ガレージとして屋根をつけることも可能ですが、屋根によって採光が取れなくなる可能性があるため、素材や色味、デザインなどに注意が必要です。
デザイン性の高い外観になる
コの字型の平屋は、メリハリのあるおしゃれな外観を実現できます。正方形の建物と比べて外壁の貼り分けや屋根のかけ方の選択肢が多く、デザインの幅が広がります。
また、コの字型では中庭を含めた独自のトータルデザインにこだわることで、周囲の住宅と差別化することも可能です。設計力のある設計事務所や工務店に依頼すれば、デザイン性がさらに高まり、機能面と美観の両方において優れた住宅を提案してもらえるでしょう。
二世帯住宅にしやすい
コの字形の凹んだ部分を二世帯住宅の共有スペースとし、分離型二世帯住宅を建てる方法もあります。各世帯の居住エリアを区別しやすいため、プライバシーを守りながらも適度な距離感を保って生活することが可能です。
また、中庭をセカンドリビングとすることで、必要に応じてコミュニケーションを取りやすい環境を確立できます。一般的な二世帯住宅では、上下で世帯を分ける2階建てが主流ですが、高齢になると階段が負担になる可能性があります。その点、生活がワンフロアで完結する平屋なら、階段の上り下りが不要です。
コの字型の平屋を建てるデメリット
コの字型の平屋は、機能性やデザイン性、中庭の柔軟な活用などさまざまなメリットが期待できる一方で、デメリットもあります。ここでは、コの字型の平屋で考えられるデメリットを紹介します。
平屋の中でも建築コストが高い
コの字型の平屋における大きなデメリットは、建築費用が高額になりやすい点です。平屋は、同じ面積の2階建てよりも基礎や屋根の面積が多くなる分、建築コストが高くなる傾向にあります。
また、コの字型は凹凸があり、壁を多く作る必要があるため、正方形やI字型、L字型の平屋に比べて材料や施工の手間が増えます。よって、建築コストが上がる可能性が高いでしょう。
加えて、中庭部分の外構工事や照明設備の設置費用も発生します。コの字型の平屋において、実用性とコストのバランスを取るために、専門家と相談しながら慎重に検討することが大切です。
広い敷地に建てる必要がある
コの字型の平屋は、中庭を作る分、正方形の平屋よりも広い敷地が必要です。特に、車を複数所有している場合やガレージを設置するケースでは、十分な広さが求められます。
また、土地の形によっては居室スペースの使い勝手が悪くなる可能性があり、変形地などではさらに土地の広さが必要になることも考えられます。
土地が広い分、購入費用や固定資産税などのコストも高くなりがちです。土地取得費用を含めたトータルでの費用をよく検討する必要があります。
生活動線が長くなる可能性がある
コの字型という形状ゆえに、生活動線が長くなることも考えられます。I字型のようなシンプルな平屋に比べて家の端から端までの距離が長く、間取りによっては移動に不便を感じる可能性があります。
仮に、トイレを端に設置し、LDKを反対側に設置した場合、トイレが遠くなり不便に感じられるでしょう。中庭を通れば距離を短縮できても、移動の度に外出しなければならず、段差や靴の履き換えなどがストレスになることもあります。
実際の生活スタイルにあった間取りを設計し、できるだけ効率的な動線を確保することが重要です。
中庭のメンテナンスが必要
コの字型の平屋で、リビングから中庭を眺められる大きな窓を設置する場合には、中庭のメンテナンスも考慮しましょう。定期的に中庭のメンテナンスを行わないと、植栽の枯葉や雑草などで見栄えが悪くなってしまいます。
雑草や虫の駆除など日々の手入れや掃除、長期的なメンテナンスの手間や費用も考えて検討することが大切です。
コの字型の平屋を建てるときの注意点
ここでは、予算や希望の条件などを総合的に満たすコの字型の平屋を建てるための注意点を紹介します。
生活動線を考えて間取りを考える
コの字型の平屋では、中庭の使い方や生活動線を意識して間取りを考えることが大切です。正方形やI字型の平屋に比べて特殊な形状をしているため、中庭の用途や生活動線を十分に考えずに設計すると、日常生活で不便を感じる可能性があります。
例えば、リビングの延長として使うならリビングからの動線を考え、移動しやすい配置にしましょう。また、洗濯物を干す場所として使うなら、洗面所から中庭に出やすい間取りが便利です。生活パターンを想定し、効率的な動線を確保できる間取りを決めましょう。
必要に応じて中庭の目隠しをする
コの字型の平屋は一面は外とつながっているため、外部からの視線が気になる場合があります。また、中庭に向けて大きな窓を設置する場合、窓のサイズや角度によっては道路から室内が丸見えになってしまう可能性があるでしょう。
プライバシーや防犯性を考慮して、目隠しとなる庭木や柵、フェンスなどの設置を検討する必要があります。
中庭の排水方法を考える
三方を壁に囲まれたコの字型の平屋に作る中庭には排水計画が必要です。水が溜まってしまうと、中庭に設けたウッドデッキの腐食やカビの発生といったリスクがあります。
また、台風やゲリラ豪雨、集中豪雨などの後に、水の排泄が追いつかず、室内に水が入ってきてしまう可能性も高まるでしょう。排水設備を設置する、中庭に水はけの良い素材を使用する、といった対策が有用です。
メンテナンスのしやすい中庭にする
中庭は、日ごろの掃除やメンテナンスが欠かせないため、お手入れのしやすさを意識することも大切です。特にリビングの大きな窓から中庭が見渡せる場合、管理が行き届いていないと見栄えが悪くなってしまいます。
中庭に植物を多く植えると手入れが大変になるため、手をかけられない場合はお手入れがしやすい植物を選びましょう。中庭の設備には、掃除の負担やメンテナンスコストのかかりにくい素材や性能のものを選ぶことも重要です。
例えば、ウッドデッキは天然の木材よりも樹脂製にすることで耐久性を確保できます。また、外壁は丈夫で汚れが目立ちにくい素材やシンプルなデザインのものを選ぶと良いでしょう。タイルやコンクリートで中庭を仕上げることで、雑草処理が不要になり、手間が軽減されます。
コの字型の平屋を建てるのにかかる費用
コの字型の平屋、一般的な平屋に比べて構造が複雑なため、建築費用が高くなる可能性があります。建築会社によって異なりますが、目安としては坪あたり約2万〜5万円ほど高額です。30坪の平屋で考えると、コの字型にすることで約60万〜150万円ほど高くなります。
また、大手住宅メーカーなどでは間取りの決められた規格プランが中心で、コの字型の平屋のプランがないこともあり、自由設計の場合は費用が上がります。建築費用を抑えるためには、資材の種類や設備グレードを見直し、予算を割く優先順位をよく検討することが重要です。
コの字型の平屋間取り例
ここからは、コの字型の平屋の間取り例を紹介します。和室のある住宅やLDKを中心とした間取りなどを取り上げますので、自宅の設計を考える際に参考にしてみてください。
【2LDK】和室とLDKを分けた間取り
玄関を中央に配置し、和室とLDK・寝室に区切った平屋の例です。LDKを通ることなく和室にアクセスでき、来客スペースとして和室を利用することもできます。また、玄関を入ると目の前の開口から中庭を見通せるため、視覚的な開放感が得られます。
採光と風通しを確保できるよう、各部屋に窓をつけている点も特徴です。
【3LDK】LDKを通って個室に移動する間取り
LDKを家の南側に配置し、個室や寝室をLDKと隣接するように並べた住宅の事例です。中庭はリビングから移動でき、プライベートな空間が実現しています。また、各部屋が外部に面しており、風通しや採光も取れるよう配慮しました。
各部屋へ移動する際にLDKを経由することになり、こまめなコミュニケーションが取りやすい間取りに仕上げています。
【4LDK】中庭につながるLDKを中心とした間取り
中庭に面したLDKが中心の4LDKの間取りです。中庭の両側には個室を配置し、窓から十分な明かりが入るように配慮されています。寝室や個室のプライベートスペースと、LDKや水回りの共有スペースがきれいに分けられている点が特徴です。
コの字型の平屋の建築実例
ここからは、コの字型の平屋の建築実例を写真とともに紹介します。注文住宅ならではの創造性の高い平屋の間取りをぜひ参考にしてください。
プライベートな外部空間を内包する平屋
CASE683 丘の上のハウス
木目と黒のシックな外観が印象的なコの字型平屋の事例です。ウッドデッキのある中庭は、LDKと寝室で囲まれており、完全なプライベート空間が確立されています。一方、玄関の正面の開口から中庭が見えるため、開放的な印象を受けます。
また、LDKと中庭はフラットにつながっており、移動がしやすい上、広々としたスペースを感じられるでしょう。寝室の正面にある窓は中庭に面しており、リラックスして過ごせる点も魅力です。
生活動線に配慮したバリアフリーの平屋
CASE680 寛か(くつろか)な平屋
中央に中庭を設置したコの字型の平屋です。ウッドフェンスを設置して、外部からの視線を遮っており、プライバシーを確保しています。屋内のホールにある大きな窓からも中庭にアクセスが可能です。
梁を見せる形で天井を高くしたLDKと中庭がフラットにつながっていて、開放感溢れる空間を演出しています。駐車スペースから室内まで段差がなく、移動のしやすさや導線にも配慮されています。
屋根をダイナミックにデザインした平屋
CASE433 奏の家
中庭を内包したコの字型平屋の事例です。 エントランスから個室、水回りまで流れるように配置されており、効率的な導線とコミュニケーションのしやすさを確保しています。また、リビングの大きな窓からは趣のある中庭を眺めることができ、ゆったりとした時間を過ごせるでしょう。
生活動線やメンテナンスのしやすさを意識して間取りを考えよう
コの字型の平屋は、風通しや採光の良い開放的なスペースを実現しやすい間取りです。凹み部分の中庭は三面を壁で囲まれており、プライバシーや安全性を確保しやすく、アウトドアや子どもの遊び場など柔軟な使い方ができます。
一方で、シンプルな形状の平屋より建築費用が高くなりがちです。また、快適に暮らせる生活動線の工夫も必要になるため、予算や希望の条件を満たすために実績のある専門家と相談しながら検討しましょう。
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この記事を書いた人
FREEDOM ARCHITECTS
長谷川 稔
1971年生まれの関西出身者。情報出版会社を経て2014年よりFREEDOM株式会社へJoin。現在プロモーション担当としてフリーダムの魅力を伝えています。