インタビュー
住宅の密集するエリアで、四方を隣地で囲われた旗竿敷地。 外観の半分は隣地の家で隠れながらも、玄関扉で羽を休めるフクロウが訪れる人を暖かく迎えるように顔をのぞかせています。 今回は、そんな都市部に多い旗竿敷地に、建替えでの家づくりをされたMさんにお話しを伺ってきました。
「家づくりをしようと思ったきっかけは、消費税増税と旧宅の老朽化が気になっていたことです。私(ご主人様)の実家に住んでいたのですが、両親が購入してから25~26年経ち、家の内外の至る所に傷みがある状態でした。 生活に支障のあるところはリフォームをしながら、子供がもう少し大きくなったら建替えをしようと検討していたのですが、消費税増税の話も出てきたため予定を早めることになりました。」
消費税を8%から10%に2017年4月から増税されると発表(後に、2019年10月へ再々延期)されたのをきっかけに、増税前に安心して長く住める家を叶えたいと思い建替えを決意されたMさん。その第一歩は、住宅展示場巡りだったようです。
「建替えをするにあたり家に求めていたことは、 “災害に強い頑丈さ”です。近隣の住宅に囲まれた敷地ですから、地震が起こった際に自宅が倒壊しないことはもちろん、近隣が倒壊し我が家に崩れかかってきても耐えられる頑丈な住まいにしたいと考えていました。そこで、大手のハウスメーカーと打ち合わせを進めていたのですが、プランの自由度が低く、叶えたい暮らしとのギャップを感じていました。何度か打ち合わせを重ねていく中で住宅会社の再検討をすることになり、ネット検索をしていたところフリーダムさんを見つけました。もともとは設計事務所に対して、敷居が高く予算も高そうというイメージを抱いていたのですが、「身の丈コスト」というフレーズに惹かれ相談の予約をしました。」
旗竿敷地で多くの方が抱かれるイメージは、「日当たりの悪さ」です。Mさんも同様の課題を感じられてはいましたが、長く安心して暮らしたいという観点から、「災害時の危険性」も感じておられました。そのため建替えを機に建物の性能も、とても重視されていたそうです。
「フリーダムさんから頂いたファーストプランは、検討していたハウスメーカーさんと建物の枠組みは同じでしたが、中身が全く異なっていたのに驚きました。フリーダムさんに依頼することに決めた一番の決め手は、担当者さんです。プレゼンをワクワクしながら話してくれ、設計を楽しんでいる方だなと感じたことです。こういう方と家づくりをしたいと思い、お願いすることに決めました。」
フリーダムの家づくりでは、決まった間取りのサイズや形はありません。白紙の状態から「どんな暮らしを叶えたいのか?」というお施主様の想いと、建築地にかかる法制限などを検討し、間取りを描いていきます。建物の大きさや形が似ていても、内部の動線の描き方や光の入り方を検討した立体的な空間構成に大きな違いが出てきます。その違いに共感いただけたご様子です。
「家づくりでテーマにしたことは、「老楽(おいらく)の家」です。老いを楽しみ、老いても楽に暮らせる住まいにしたいと考えていました。叶えたかったことは、お風呂を2階に配置することと、1階LDKで明るい空間にしたいということでした。旧宅では、お風呂が1階で洗濯干し場が2階に配置されていたため、家事をするのに縦の移動があり、とても不便に感じていました。その他に、日当たりが悪く使っていない部屋があることも改善したいと考えていました。」
旗竿敷地では1階に明るい光を届けることが難しく、2階にLDKを配置し明るい空間を叶える間取り構成にするケースが多くみられます。しかし、Mさんは老後の暮らしやすさも重視され、1階LDKを希望されていました。これは旗竿敷地という条件下で、明るいLDKを叶えたいというご要望と相反する内容です。そこで設計者が提案したのは、“2階廊下にガラス床を採用する”というものでした。住宅であまり見かけない“ガラス床”という提案をどのように受け止められたのでしょうか?
「正直、抵抗感がありました。下の階が見えるという怖さと、開放感がありすぎるのではないかと。商業施設だと面白みがあるかもしれませんが、家庭ですので“落ち着きたい”という気持ちもあり、”次回の打合せでガラス床をやめたいと伝えよう”と、何度も思っていました。しかし、詳細打ち合わせが進んでいく中で、透明ガラスから乳白色ガラスに変更する提案を頂いて、採用することにしました。完成宅を見て、ガラス床の部分が天井だったら暗い空間になっただろうなという実感もあったため、採用して良かったと感じています。」
ガラス床という想定していない提案に対して、設計期間中悩まれていたという本音をお話してくださったご主人様。「結果、取り入れて良かった。」と、お話された際の笑顔に完成宅にご満足いただけているご様子が伺えました。
「内外装を決めていく際に重視していたのは、性能です。旧宅は寒く、ファンヒーターで暖をとっていたため、“高気密・高断熱”な住まいを叶えたいと思っていました。また、メンテナンスも大変でしたので、 “メンテナンスフリー”というテーマにもこだわりました。断熱材は発泡スチロールで家を覆ったように出来る現場発泡硬質ウレタンを採用し、外壁材はシーリングを使わないことでメンテナンスが不要になるサイディングにしました。光熱費を旧宅と比べることは難しいのですが、冬場にファンヒーターを使う時間が短くなったことや、一度部屋を暖めると長時間持続するのを体感しているので、暖房費は下がったと思います。逆に夏場は玄関ドアを開けるとほんのり涼しく、あわてて冷房をつけるということがほぼないですね。1年を通して室温が安定しているようで、”冬は暖かく、夏は涼しい”住まいになり快適に過ごせています。こだわった素材の断熱材を取り入れると、初期コストはかかりますが後々の暮らしを考えると、採用をオススメしたいですね。」
建築時や大規模リノベーションをするときでないと素材の変更が難しい、断熱材と外壁材。外壁材は素材によりメンテナンス周期に違いがありますが、サイディングの場合は約10年に1度サイディング同士をつなぎ合わせるシーリングの交換をすることが望ましいとされています。外壁のメンテナンスは足場を組む必要があり、大きなメンテナンス費用がかかります。Mさんは全てにコストをかけるのではなく、こだわる部分に集中させメリハリある配分をしたことで、ランニングコストの軽減と旧宅で感じられていた性能面での課題解決をされました。
「内観決めでは、旧宅でも使っていた食器棚に合わせ、ウォールナットという色味を基調にしました。家チェキを活用して、階段のデザインイメージや空間イメージを、担当者さんと共有していました。」
奥様がお嫁入りの時に、お父様からプレゼントしてもらった大切な食器棚を中心とした、落ち着きのある空間に仕上げられたLDK。床の色味を明るくすることで、軽やかさもある心地よい空間です。
「採用して良かったと思うことは、ウォークスルークローゼットですね。家族の衣類が全て1か所に収納できるだけでなく、衣替えが不要なサイズにしているので、とても便利です。浴室・洗面兼室内干し場との距離も近く、2階で洗濯関係の家事が完結できる動線も、間取り決めの時にこだわったポイントです。洗面室にエコカラットを採用したのもよかったです。湿度が高い空間ですが結露もしないですし、天気が悪い日に室内干しをしても1日で乾くので、とても快適です。」
朝、家族を送り出した後に家の中を見ると、”各居室やリビングに部屋着が散乱している”という経験をされたことがあるご家庭は多いのではないでしょうか。Mさん邸では、主寝室と子供部屋をウォークスルークローゼットで繋ぎ、クローゼット内で着替えなどの身支度をしてから洗面室へと行けるとても機能的な動線で、暮らしの快適さを高められています。そうして完成したMさん邸。普段の過ごし方や、お気に入りの空間を伺ってみました。
「お気に入りの空間は、LDKですね。ダイニングで食事をした後に、リビングでTVや映画を見ていることが多いです。この家に住むようになってから“吹抜けって面白い“と、思うようになりました。音響環境をサラウンドにしたいという夢があったのですが、吹抜けがあることで音が反響するんです。断熱材の効果かも知れませんが、大音量でも外に音漏れしないので、一人で過ごす時間は好きなクラシックを大音量で楽しんだりもしています。」
「どれくらいの音量なら音漏れしないか、実験したんですよ。」と、完成宅での暮らしを楽しそうに語ってくださったのは奥様。暮らしの中で面白いと思われたことは、吹抜けだけではなかったそうです。
「空間の印象を変える“照明”も面白いと思いました。ガラス床の下と玄関に間接照明を入れているのですが、特にガラス床は、照明をつけた時と付けていない時で印象が大きく変わりますね。これは、担当者さんの提案通りにすれば良かったかなと思うことですが、”住んでいく中で、間接照明を使わなくなるのでは?”と考え、メインの照明とスイッチを一緒にする形で採用しました。ですが、それぞれの照明スイッチが独立していれば、その時の気分で明るさを調節するなど、楽しみ方が増えたのかなと感じています。」
昼間は階段上部に設けたられた4つ窓から吹抜けとガラス床を通して、キラキラとした光が降り注ぐ印象的なリビング。旗竿敷地の1階リビングに抱いていたイメージが覆るほど、明るい空間に仕上がっています。夜間には、2階の照明がガラス床を通してリビングまで光が届き、2階ではガラス床が光っているような幻想的な印象です。 最後に、旧宅と完成宅を住み比べ、家に対する印象や暮らしの変化を伺いました。
「暖かく、家事が楽になりました。旧宅で感じていた課題点がしっかり解決され、無駄な空間がないので家全体をフル活用出来ています。なるべく、家で過ごしたいと思うようになりましたね。」
家づくりをされるきっかけやタイミングはご家庭ごとに様々です。しかし、Mさんのように暮らしの改善したい点を明確にもち家づくりをすることが、「理想の住まい」を叶える重要なポイントなのだと、改めて感じさせていただきました。 Mさんの終の棲家となる「老楽の家」。暮らしを彩るガラス床と吹抜けと共に、豊かな時間を重ねていきます。
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この記事を書いた人
FREEDOM ARCHITECTS
長谷川 稔
1971年生まれの関西出身者。情報出版会社を経て2014年よりFREEDOM株式会社へJoin。現在プロモーション担当としてフリーダムの魅力を伝えています。